大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
7. 君のことを思ってる


 音大を卒業した私は、久しぶりに地元へ帰省することになった。


 この町を出て四年、一度も戻って来なかったし家族と顔を合わせてない。

 母とはメールでやり取りしてたけど、それ以外は音信不通にしてピアノに没頭していた。


 そのおかげで、海外へ音楽留学することが決まる。

 明日、日本を旅立つ前にピアノ教室の先生と約束してたことがあった。


 しばらく帰国できないという噂を聞いたらしく、私の演奏を聴きたいと言ってきたのだ。

 なかなか都合が付かず、海外へ旅立つ直前になってしまった。

 明日の朝までに空港へ行かなければならない強行スケジュール。


 偶然、演奏する機会が地元であったらしく、先生に強引な形で誘われてしまう。

 断ることもできないので、しかたなくだけど承諾。

 なんていうのは嘘で、先生に会いたくてしかたなかった。


 教わった技術に磨きをかけて、海外でも通じるぐらい腕を上げたと自負してるからだ。

 その成果を見てもらえるなんて、嬉しすぎるよね。


 でも、指定された場所へ行って驚いた。



「ショッピングモール?」



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