大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 ピアノの詩人、ショパンの遺作を無事に弾き終え、私は椅子から立ち上がり観客に向けて頭を下げた。


 鳴り止まない拍手とブラボーの声。

 二階と三階から見下ろしていた人たちからも盛大な拍手が送られてる。


 私が見つめる先には、優介と沙也香、そして可愛い女の子。


「二人とも、結婚おめでとう……」


 私が呟いた言葉なんて聞こえて無いはずだけど、沙也香が大粒の涙を流しながら握手をしていた。

 子供も笑顔で拍手をしてる姿が可愛い。

 優介も笑顔で私を見守ってる。


 ステージから降りる時、離れた場所で私を見つめていた先生が近づいてきた。


「ステキな演奏だった、音大で頑張っていた成果を見せてもらったよ」


「ありがとう、先生のおかげです」


「海外に行ったら、しばらく会えないけど……きっと、美人になって帰ってくるんだろうね……」


「えっ、じゃあ今はブサイクってことですか?」


「そうじゃないよ!相変わらず美優くんは、僕を困らせる天才だな」


 この町を離れて四年になるけど、高校生の時と同じくらい先生を困らせるのが好きみたい。


「先生、大好き……」


「美優くん、また僕を困らせる!」



 お互いに笑いあって、先生と一緒に控え室へ行こうとしていた時……



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