大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
小声で呟きながら、廊下を歩いて教室へ向かう。
高校三年生の私は、秋に大切なコンクールを控えてる。
その結果しだいで、進路の行方が決まってしまう。
「すいません、矢島先輩ですよね」
「えっ!はい、そうですけど……」
考え事をしながら廊下を歩いてると、知らない女子生徒に声を掛けられた。
「これ、弟の矢島くんに……」
女の子は頬を赤く染めて、恥ずかしそうに手紙を差し出してくる。
制服の胸のリボンが青だから、私より年下の二年生だろう。
ということは、なんとなく予想ができてしまう……
「私から優介に渡せばいいのかしら?」
「突然ゴメンなさい!お姉さん、お願いします!」
一方的に私へ言い放った後、女子生徒は小走りでその場を立ち去っていく。
心の中で「私はアナタのお姉さんでははいのよ」と言葉に出さず呟いた。