大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
8. エピローグ
ショッピングモールで演奏が終わった後、私は実家に向かう。
父は留守だったので、母と顔を合わせて話しをする。
食卓テーブルの椅子に座ったら、お茶を出してくれたけどゆっくりしてる時間はない。
すぐに家を出て、夜行バスに乗り空港へ向かうからだ。
四年前、出張から帰ってきた両親に打ち明けられた言葉を今でも覚えてる。
目の前にいる本当の母親は、再婚相手の父に気を使って話してるのが印象的だった。
「お母さん、あの時レストランで私に何か言いかけて、お父さんに怒られてたよね」
母は私の言葉を聞いて、あの時に言えなかったことが心苦しかったようで、奥の部屋に一人で行き手紙を書き始めた。
家を出る時間が近づいてきた時、玄関で待つ私の所に母が姿を見せる。
急いで書いた手紙を茶封筒の中に入れ、私に手渡してきた。
そして、母は私を抱きしめながら言ってくる。
「飛行機に乗ってから読んでほしいの、バスや空港で見てはダメよ」
「わかった、行ってくる」
「気をつけてね」
いくつになっても母にとって私は実の子供で、気に掛けてくれる存在なんだと実感した。