sweet sweet chocolate

わたしの唇に触れた硬いチョコレートは、名残惜しく離れ、そのまま仲井君の口元に届く。

カリッとチョコレートを噛むその音は、風の音すらない保健室の中に響く。

甘ったるい香りが、さっきよりぐっと、広まった。

仲井君の丸い瞳がすっと細まり、わたしの口元を捉える。

捕まったわたしは、もう、身動きひとつ、できない。


甘い香りが鼻先に届き、そのまま吸い込まれる様に、唇に、ついた。


触れた仲井君の唇は温かくて、同時にとても、甘い。


甘い。逃げられない。
深く溶け込むチョコレートは、わたしの身体を、いとも簡単に包み込んだ。


つっと伝った涙すら、甘い香りがする。


苦しい。痛い。苦い。


甘すぎて、呼吸ができない。


< 12 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop