sweet sweet chocolate
「っ......!はぁ、」
ようやく離れた唇から、嗅ぎ慣れた保健室の薬剤の香りが流れ込む。
肺を空気が満たすけど、流れ込んだ甘いチョコレートは、わたしの身体をいとも簡単に支配する。
甘くて、少しだけ苦い。
知っている。この甘い味は、簡単に離れさせてくれない。
中毒の様に、身体を蝕んでいく。
そして何度も、望んでしまう。
この甘さと苦さを、身体が忘れないように。
「ねぇ、先輩」
唇は離したけれど、頬を包み込む手のひらはそのままで。
仲井君の人懐っこい口角が、視界から離れない。
子犬の様なその表情は可愛いけれど、その目元は、わたしを捕らえて離さない。
「ご飯食べましょ」
「......いや」
「俺、旨いラーメン屋知ってます。女子に人気のパスタ屋も。それとも、インスタ映えするカフェがいい?」
「そんなの、興味ない」
「ハハッ、そしたらまた、食べさせてあげましょうか?」
クシャッっと笑った顔は可愛いけれど、わたしの心臓を刺すような目元は、簡単に脈拍数を上げさせる。
かあっと火照った頬を、もう一度仲井君の手のひらが包み直した。
「食べさせてあげるよ、何度でも」