sweet sweet chocolate
ふわっと保健室の窓から舞い込む風は、夏の色を帯びている。
殆どの生徒が半袖で来ている中、わたしは長袖の制服に身を包んでいた。
少し前までは、太っている気がして見せたくなかった足や腕。
制服の上から触れる骨張った腕をさすり、吐き気がした。
痩せなきゃいけないという概念は凄いスピードでわたしを包み込み、あっという間に呪われた。
食べなければ、スルスルと体重は落ちる。
「香澄、痩せたね!」と友達が言うたびに、どうしようも無い高揚感に包まれる。
最初はよかった。でも次第に、普通のご飯ですら食べるのが怖くなった。
これを一口食べたら、また体重が増えるんじゃないかな。
これを残したら、もう1キロ減るんじゃないかな。
そんな風に少しずつ、食べ物が喉を通らなくなった。
そうして出来上がったのは、骨と皮だけの痛い姿。
そんな姿になってもなお、わたしはまだ、ご飯を食べられない。