sweet sweet chocolate
「先輩はどったの?風邪?仮病?」
「え、違うよ。ちょっと、貧血で......」
「ありゃま!そりゃ大変だ。ちょい待ちな」
ガサゴソとポケットを漁り、ずいっと目の前に差し出された手のひらに乗っていたのは、小さなチョコレート。
「ほい、食べな」
「......え、」
「チョコ。血糖値大事だよ」
差し出された手のひらに乗るその小さなカケラに、わたしの心はざわついた。
知っている。
このカケラはとても甘くて、ほんの少し苦くて、そしてわたしの体を、蝕むもの。
さっと青くなって固まってしまったわたしに、仲井君は小首を傾げて「チョコ、嫌い?」と聞く。
「嫌い...じゃ、ない。食べられない」
「食べられない?」
「チョコ、太るから」
「太る?」と、おうむ返しをする仲井君。
ころっとした丸い瞳が、より丸くなる。
「いやいや先輩、逆にちょっと太った方がいいよ。めっちゃ細いじゃん」
「...っ...!そんなことない!勝手なこと言わないで!」