親子ほど歳の離れた異性に恋に落ちたことはありますか?
第23話
僕は梅田さんの言葉を全て信じたわけでは無いが、上田さんならたしかにあり得ると思った。
上田さんは同じ鮮魚コーナーのパートさんで、二人になると決まって夜の話になる。どれだけ欲求不満なのか知らないが、聞きたくもない夫婦の関係の話に延々と付き合わされていた。
そんな彼女が話のネタに面白おかしく僕達の噂を広めているという可能性は大いにあり得る。
「上田さんですか…でもなぜ急にそんな噂をし始めたんでしょうか?」
「あの時ね…私以外にも上田さんが北村君の車から鈴木さんが降りるのを見たらしいのよ。それで私も見たよって言ったらあの二人は怪しいって言い出したの。それから店の中ではそんな噂で持ちきりになったのよ」
そういうことだったのか…
「そうだったんですか…僕はてっきり…」
「私があの時の腹いせにそんな噂を流したって思ってたのね…」
「はい…すみません…」
「たしかにあの時は頭に血が上って怒っちゃったわね。ごめんなさい…私…北村君のことけっこう好きだったから…それにしても鈴木さんどうしちゃったのかしらね?」
「なんかよくわからないけど、体調不良らしいですよ」
「そう言えば最近鈴木さん顔色良くないもんねぇ。この前も更衣室で屈んでいたから声をかけたら、すぐに立ち上がって『何でもないの、大丈夫よ』って言って足早に立ち去ったことがあったわ…」
「え?そんなことがあったんですか?」
「うん…でも笑顔だったし、そんな気にする程でもないのかなって思ったわ」
朋美さん…いったいどうしたんだろう…やっぱり何か病気なんだろうか…
僕は不安な気持ちを抑えきれず、朋美さんのアパートへ車を走らせた。ベランダ側に回り込んで部屋の明かりを確かめてみる。しかし、窓は真っ暗で居るのか不在なのかわからない。もしかしたら布団に横になって安静にしてるだけなのかもしれない。
僕は休んでる邪魔をするといけないと思い自分の寮に帰った。もし、本当に休んでるだけなのであれば…
その翌日になって、朋美さんの出勤する時間帯に僕は従業員通用口の近くで朋美さんを待ち伏せする。
少し待って朋美さんが姿を表した。僕は少し疑心暗鬼になりながらも、平静を装って普通に挨拶した。
「朋美さんおはようございます」
朋美さんも何事もなかったかのように笑顔で
「和ちゃんおはよう!ごめんね心配かけちゃって」
と、明るく声をかけてくれた。
僕は朋美さんのその笑顔の奥の真相が知りたかった。
朋美さん…いったい僕の知らない間に何が起こってたんですか?本当にただ体調が悪かっただけなんでしょうか?それとも他に僕には会えない事情があったんでしょうか?
ただ体調が悪いだけなら僕と会えなかった理由が知りたい…梅田さんの言ってたことは信じたく無いけど、どうしても急に態度が変わった理由が気になってしまう…
そんなことを考えながら僕は朋美さんの笑顔を見ていた。
「体調大丈夫なんですか?」
「うん、ごめんね。何だか最近ちょっと体調が良くないことが多くなってきて…歳のせいかしらね?」
「大丈夫なら良いんです…」
朋美さんは、僕の声のトーンの低さに何かを感じ取ったらしく
「和ちゃん?」
と僕の顔を覗き込んできた。
「え?いや、別に…」
「今夜は家でご飯にしましょ?」
僕は思わず周りに誰か居ないか振り向いて確認する。
「朋美さん、喜んで!」
そうしてこの日仕事が終わってから真っ直ぐ朋美さんの家に向かった。
朋美さんは唐揚げを作って待っていてくれた。
僕らは食事を終えてまったり寛ぐ。
「ねぇ和ちゃん、今度花火見に行かない?」
「あっ!良いですねぇ!今週の土曜日の夜に大きな花火大会があるんでそれを見に行きましょう!」
やっぱり朋美さんはいつもの朋美さんだ。今までと何も変わらない。結局僕の思い過ごしだったのか…
そう思い直し僕は朋美さんに対する不信感を忘れることにした。
そして花火大会当日を迎えた。
この地区最大規模の花火大会とあって、人の賑わいも車の数も尋常じゃない。車で来るのは避けてバスで来たのだが、果してこんな人混みの中でゆっくり花火など見れるのかと心配になっていた。
そして時間になり
ドォーン!
と大きな花火が綺麗な火花を散らせながら打ち上がった。
最初は時間差で大きな花火が数発打ち上がり、そして小さい仕掛け花火が連続して打ち上がり始めた。そこから大きな花火と小さな花火が入り乱れ、盛大かつ美しい花火が人々の心を楽しませていく。花火の打ち上げ場所との距離が割りと近く爆発した振動が胸に強く響いてきて、音の迫力がこの美しさと相乗効果で五感を強く刺激してきた。
朋美さんは握っていた僕の手をいつの間にか強く握りしめてきていた。
「朋美さん、最高に綺麗ですね!」
僕は花火の音に負けないぐらいの大きな声で言った。
「そうねぇ!来て良かったわ!」
僕は朋美さんの満足げな表情を見て凄く幸せな気分に浸れた。
もっともっと沢山二人だけの思い出を作りたい!
僕はこの幸せがこれからもずっと続けば良いのにと淡い想いを胸に抱いていた。
しかし、何故か僕の心の中は言葉には言い表せない不安な気持ちが存在していた。
なんだろう?この不安は…何かが変だ…何かが…朋美さんはいつも通り…のはずなんだけど…
上田さんは同じ鮮魚コーナーのパートさんで、二人になると決まって夜の話になる。どれだけ欲求不満なのか知らないが、聞きたくもない夫婦の関係の話に延々と付き合わされていた。
そんな彼女が話のネタに面白おかしく僕達の噂を広めているという可能性は大いにあり得る。
「上田さんですか…でもなぜ急にそんな噂をし始めたんでしょうか?」
「あの時ね…私以外にも上田さんが北村君の車から鈴木さんが降りるのを見たらしいのよ。それで私も見たよって言ったらあの二人は怪しいって言い出したの。それから店の中ではそんな噂で持ちきりになったのよ」
そういうことだったのか…
「そうだったんですか…僕はてっきり…」
「私があの時の腹いせにそんな噂を流したって思ってたのね…」
「はい…すみません…」
「たしかにあの時は頭に血が上って怒っちゃったわね。ごめんなさい…私…北村君のことけっこう好きだったから…それにしても鈴木さんどうしちゃったのかしらね?」
「なんかよくわからないけど、体調不良らしいですよ」
「そう言えば最近鈴木さん顔色良くないもんねぇ。この前も更衣室で屈んでいたから声をかけたら、すぐに立ち上がって『何でもないの、大丈夫よ』って言って足早に立ち去ったことがあったわ…」
「え?そんなことがあったんですか?」
「うん…でも笑顔だったし、そんな気にする程でもないのかなって思ったわ」
朋美さん…いったいどうしたんだろう…やっぱり何か病気なんだろうか…
僕は不安な気持ちを抑えきれず、朋美さんのアパートへ車を走らせた。ベランダ側に回り込んで部屋の明かりを確かめてみる。しかし、窓は真っ暗で居るのか不在なのかわからない。もしかしたら布団に横になって安静にしてるだけなのかもしれない。
僕は休んでる邪魔をするといけないと思い自分の寮に帰った。もし、本当に休んでるだけなのであれば…
その翌日になって、朋美さんの出勤する時間帯に僕は従業員通用口の近くで朋美さんを待ち伏せする。
少し待って朋美さんが姿を表した。僕は少し疑心暗鬼になりながらも、平静を装って普通に挨拶した。
「朋美さんおはようございます」
朋美さんも何事もなかったかのように笑顔で
「和ちゃんおはよう!ごめんね心配かけちゃって」
と、明るく声をかけてくれた。
僕は朋美さんのその笑顔の奥の真相が知りたかった。
朋美さん…いったい僕の知らない間に何が起こってたんですか?本当にただ体調が悪かっただけなんでしょうか?それとも他に僕には会えない事情があったんでしょうか?
ただ体調が悪いだけなら僕と会えなかった理由が知りたい…梅田さんの言ってたことは信じたく無いけど、どうしても急に態度が変わった理由が気になってしまう…
そんなことを考えながら僕は朋美さんの笑顔を見ていた。
「体調大丈夫なんですか?」
「うん、ごめんね。何だか最近ちょっと体調が良くないことが多くなってきて…歳のせいかしらね?」
「大丈夫なら良いんです…」
朋美さんは、僕の声のトーンの低さに何かを感じ取ったらしく
「和ちゃん?」
と僕の顔を覗き込んできた。
「え?いや、別に…」
「今夜は家でご飯にしましょ?」
僕は思わず周りに誰か居ないか振り向いて確認する。
「朋美さん、喜んで!」
そうしてこの日仕事が終わってから真っ直ぐ朋美さんの家に向かった。
朋美さんは唐揚げを作って待っていてくれた。
僕らは食事を終えてまったり寛ぐ。
「ねぇ和ちゃん、今度花火見に行かない?」
「あっ!良いですねぇ!今週の土曜日の夜に大きな花火大会があるんでそれを見に行きましょう!」
やっぱり朋美さんはいつもの朋美さんだ。今までと何も変わらない。結局僕の思い過ごしだったのか…
そう思い直し僕は朋美さんに対する不信感を忘れることにした。
そして花火大会当日を迎えた。
この地区最大規模の花火大会とあって、人の賑わいも車の数も尋常じゃない。車で来るのは避けてバスで来たのだが、果してこんな人混みの中でゆっくり花火など見れるのかと心配になっていた。
そして時間になり
ドォーン!
と大きな花火が綺麗な火花を散らせながら打ち上がった。
最初は時間差で大きな花火が数発打ち上がり、そして小さい仕掛け花火が連続して打ち上がり始めた。そこから大きな花火と小さな花火が入り乱れ、盛大かつ美しい花火が人々の心を楽しませていく。花火の打ち上げ場所との距離が割りと近く爆発した振動が胸に強く響いてきて、音の迫力がこの美しさと相乗効果で五感を強く刺激してきた。
朋美さんは握っていた僕の手をいつの間にか強く握りしめてきていた。
「朋美さん、最高に綺麗ですね!」
僕は花火の音に負けないぐらいの大きな声で言った。
「そうねぇ!来て良かったわ!」
僕は朋美さんの満足げな表情を見て凄く幸せな気分に浸れた。
もっともっと沢山二人だけの思い出を作りたい!
僕はこの幸せがこれからもずっと続けば良いのにと淡い想いを胸に抱いていた。
しかし、何故か僕の心の中は言葉には言い表せない不安な気持ちが存在していた。
なんだろう?この不安は…何かが変だ…何かが…朋美さんはいつも通り…のはずなんだけど…