親子ほど歳の離れた異性に恋に落ちたことはありますか?
第31話
「ちょっ…ちょっと…待って…下さい…何の…冗談…気分が悪い…」
僕は今目の前にあるものがとても現実のものとは思えなかった。どこか違う世界の出来事というか…今僕自身が本当にここに存在しているのかわからないというのか…
つまり僕の頭の中はこの現実に付いて行けていない状態だった。
副店長は僕の心情を察してか、しばらく何も言わずに待っていてくれた。
僕は段々と心と頭が追い付いて来て、目の前の現実を理解し始めた。
僕はあまりの突然の出来事に涙も流れない…
こんなに悲しいのに…
こんなに虚しいのに…
こんなに苦しいのに…
こんなに…
淋しいのに…
突然僕の前から姿を消して…
サヨナラの一言もいえなくて…
ありがとうだっていってないのに…
どうして?
どうして………
気付いたら副店長は仏壇の前の朋美さんの遺影の前で線香をあげて手を合わせていた。
そしてゆっくりと振り返り
話し出した。
「鈴木君はね…君と付き合ってしばらくした頃からずっと癌の苦しみと闘ってたんだよ…」
副店長は僕から目を離し、涙声に変わっていった。
「鈴木君は…自分がもう長くないことを知って…身体の痛み苦しみと闘いながら必死に………
君との人生最期の想い出を………」
副店長は必死に涙を堪えながら続けた。
「想い出を………
作る為に必死で頑張っていたんだ…
そして………
君の為に彼女は………
何も言わずに君の前から………
そして…
俺が今の店に戻ることを知って…身寄りのない彼女は…
俺に全てを託したのさ…
彼女が急に仕事を辞めたのは…もう身体の限界を感じていたのと、俺がこの日にこうして君に全てを打ち明けるように算段がついたからだったんだよ…
彼女は自分の弱っていく姿や、変わり果てて行く姿を君に見せたくは無かったのさ…
だから若く綺麗なままの彼女の姿を写真に収めて想い出として君に残したかった…
彼女はね…
病室でいつもいつも写真を手に、君との想い出を語っていたんだよ…
俺にはそれが…
死んでも君との想い出を忘れないように何度も何度も胸の中に納めようとしているように思えてたんだ。
君は幸せ者だね…
一人の女性からそんなにも強く想われることが出来て…
彼女が…
亡くなったのは…
つい一週間前のことさ…」
僕は愕然とした。
朋美さんがそんなにも辛い想いをして一人で闘っていたとき…
僕はいったい何をしていた?
僕はバカだ…
どうしようもないバカだった…
何故朋美さんを信じてあげることが出来なかったんだろう…
どうしてあんなに疑ってしまったんだろう…
朋美さんにフラれたと勘違いして、朋美さんに対していったい僕はどれ程の過ちを犯してしまったんだろう…
きっと朋美さんは凄く淋しい想いをしただろうに…
一人で辛い想いをしただろうに…
苦しかっただろうに…
なのに僕は?
僕はその頃何をしていた?
朋美さんに対して当て付けのようにいろんな女を抱いて?
自分勝手に楽しくもないギャンブルに走って?
あの時どんなに悪ぶっても何も満たされることなんか無かったのに…
結局いつもいつも頭の中には朋美さんしか居なかったのに…
なのに僕は朋美さんに対してどんな酷い仕打ちをした?
徐々に僕は自責の念に押し潰されていく…
「そうだったんですね…」
僕はうなだれながら副店長に質問を投げかけた。
「一つだけ…
教えてもらえますか?」
副店長は黙ってうなずいた。
「………副店長は過去に朋美さんと関係があったんですか?」
「関係?そうか…確かに鈴木君とは何度かご飯を食べに行ったことはあったよ。彼女が最愛の旦那さんと死別して…それで生きる気力を失くしてた時に、俺が相談に乗って彼女を慰めた…
その後に俺がたまたま異動になったから、そういう噂が立ったのかもな…
しかし、これだけは言っておくよ。今の職場では色々噂が立っていたようだが………
彼女は誰にでも簡単になびくような軽い女性では決して無いと。
本当に純粋で一途な素敵な女性だったと…」
僕はその言葉を聞けただけで満足していた。
本気で愛した朋美さんが、完全に僕の理想通りの女性であったことに。
~現在に戻る~
実花は僕の話を聞いてボロボロと涙を流していた。
化粧が崩れていたが必死にハンカチで涙を抑えながら黙って聞いている。
「僕は……………
君が思っているような男じゃないんだよ…
僕の身体は汚れて………
彼女を裏切って………
自分勝手で………
それに…
君には僕のような運命を辿らせたくないんでね…」
「それは…どういうことですか?私、主任に過去に何があっても…私の想いは変わりません!
だって…
覚えてますか?
まだ私が事務の要領がわかって無くて失敗して一人で残業してた時のこと…
あの時主任は、私の為に自分もやり残した仕事が溜まってるからと下手なウソを付いて一緒に居残って下さいました。
そういう優しさに…
いつか私を………
主任の側に置いて欲しいって………
想うようになったんです…
だから…」
実花がそこまで言ったのを僕は制止して
「安西君…ありがとう…
でも、もう君の気持ちを受けるには遅すぎたようだ…」
「え?」
「すまない…どうやら僕にも残された時間は少ないみたいなんだ…」
「え?それって…どういう意味ですか?」
僕は今目の前にあるものがとても現実のものとは思えなかった。どこか違う世界の出来事というか…今僕自身が本当にここに存在しているのかわからないというのか…
つまり僕の頭の中はこの現実に付いて行けていない状態だった。
副店長は僕の心情を察してか、しばらく何も言わずに待っていてくれた。
僕は段々と心と頭が追い付いて来て、目の前の現実を理解し始めた。
僕はあまりの突然の出来事に涙も流れない…
こんなに悲しいのに…
こんなに虚しいのに…
こんなに苦しいのに…
こんなに…
淋しいのに…
突然僕の前から姿を消して…
サヨナラの一言もいえなくて…
ありがとうだっていってないのに…
どうして?
どうして………
気付いたら副店長は仏壇の前の朋美さんの遺影の前で線香をあげて手を合わせていた。
そしてゆっくりと振り返り
話し出した。
「鈴木君はね…君と付き合ってしばらくした頃からずっと癌の苦しみと闘ってたんだよ…」
副店長は僕から目を離し、涙声に変わっていった。
「鈴木君は…自分がもう長くないことを知って…身体の痛み苦しみと闘いながら必死に………
君との人生最期の想い出を………」
副店長は必死に涙を堪えながら続けた。
「想い出を………
作る為に必死で頑張っていたんだ…
そして………
君の為に彼女は………
何も言わずに君の前から………
そして…
俺が今の店に戻ることを知って…身寄りのない彼女は…
俺に全てを託したのさ…
彼女が急に仕事を辞めたのは…もう身体の限界を感じていたのと、俺がこの日にこうして君に全てを打ち明けるように算段がついたからだったんだよ…
彼女は自分の弱っていく姿や、変わり果てて行く姿を君に見せたくは無かったのさ…
だから若く綺麗なままの彼女の姿を写真に収めて想い出として君に残したかった…
彼女はね…
病室でいつもいつも写真を手に、君との想い出を語っていたんだよ…
俺にはそれが…
死んでも君との想い出を忘れないように何度も何度も胸の中に納めようとしているように思えてたんだ。
君は幸せ者だね…
一人の女性からそんなにも強く想われることが出来て…
彼女が…
亡くなったのは…
つい一週間前のことさ…」
僕は愕然とした。
朋美さんがそんなにも辛い想いをして一人で闘っていたとき…
僕はいったい何をしていた?
僕はバカだ…
どうしようもないバカだった…
何故朋美さんを信じてあげることが出来なかったんだろう…
どうしてあんなに疑ってしまったんだろう…
朋美さんにフラれたと勘違いして、朋美さんに対していったい僕はどれ程の過ちを犯してしまったんだろう…
きっと朋美さんは凄く淋しい想いをしただろうに…
一人で辛い想いをしただろうに…
苦しかっただろうに…
なのに僕は?
僕はその頃何をしていた?
朋美さんに対して当て付けのようにいろんな女を抱いて?
自分勝手に楽しくもないギャンブルに走って?
あの時どんなに悪ぶっても何も満たされることなんか無かったのに…
結局いつもいつも頭の中には朋美さんしか居なかったのに…
なのに僕は朋美さんに対してどんな酷い仕打ちをした?
徐々に僕は自責の念に押し潰されていく…
「そうだったんですね…」
僕はうなだれながら副店長に質問を投げかけた。
「一つだけ…
教えてもらえますか?」
副店長は黙ってうなずいた。
「………副店長は過去に朋美さんと関係があったんですか?」
「関係?そうか…確かに鈴木君とは何度かご飯を食べに行ったことはあったよ。彼女が最愛の旦那さんと死別して…それで生きる気力を失くしてた時に、俺が相談に乗って彼女を慰めた…
その後に俺がたまたま異動になったから、そういう噂が立ったのかもな…
しかし、これだけは言っておくよ。今の職場では色々噂が立っていたようだが………
彼女は誰にでも簡単になびくような軽い女性では決して無いと。
本当に純粋で一途な素敵な女性だったと…」
僕はその言葉を聞けただけで満足していた。
本気で愛した朋美さんが、完全に僕の理想通りの女性であったことに。
~現在に戻る~
実花は僕の話を聞いてボロボロと涙を流していた。
化粧が崩れていたが必死にハンカチで涙を抑えながら黙って聞いている。
「僕は……………
君が思っているような男じゃないんだよ…
僕の身体は汚れて………
彼女を裏切って………
自分勝手で………
それに…
君には僕のような運命を辿らせたくないんでね…」
「それは…どういうことですか?私、主任に過去に何があっても…私の想いは変わりません!
だって…
覚えてますか?
まだ私が事務の要領がわかって無くて失敗して一人で残業してた時のこと…
あの時主任は、私の為に自分もやり残した仕事が溜まってるからと下手なウソを付いて一緒に居残って下さいました。
そういう優しさに…
いつか私を………
主任の側に置いて欲しいって………
想うようになったんです…
だから…」
実花がそこまで言ったのを僕は制止して
「安西君…ありがとう…
でも、もう君の気持ちを受けるには遅すぎたようだ…」
「え?」
「すまない…どうやら僕にも残された時間は少ないみたいなんだ…」
「え?それって…どういう意味ですか?」