俺はずっと片想いを続けるだけ**おまけ
グレイスなら……殿下にとって、彼女は運動指南の師範であり、妹であり……

今の王宮で監禁状態に近い殿下の心を、落ち着かせるのはグレイスが適任のような気がしたのだ。


「わかりました、クリスがそう仰せなら」

グレイスの手を取り、馬車に乗り込んだ。

母はこれから料理長に指示を出し、明日使う筈だった大量の食材で夜食を作って届けてくれると、言う。
手の空いたものから食べて貰うようにだ。


それをグレイスの前で言う辺り、本当に母はわかっている。
大量の夜食と聞いてグレイスのモチベーションは上がった!


 ◇◇◇


「何故、俺がルシアのところに行けないんだ?」

それはね、殿下。
今、皆手一杯なんです。
もう少し、今少しだけ動かないでいてください。
そう俺は答えられなかった。


グレイスが殿下の側へと進んだ。


「殿下……今妃殿下は一生懸命、それこそお命を
かけて、御子様を産もうとされているのです」

殿下の前で膝をついて、グレイスは殿下の手を
取った。


「妃殿下のお側には、医師や助産師もついております。
 専門の者にお任せした方が上手く行きます」

「グレイス……本当に?」

「殿下がお馴染みの、イメージしてみましょう?
 そして、ご無事にお産まれになった御子様に
これから私がご用意する運動メニューを、ご一緒に考えてくださいませ」

「そうだな、私は先の事を計画するのは得意なんだ」


ようやく殿下が笑って、グレイスはその手を軽くたたいて。


他の男の手を握るなんて、今日だけは見逃すよ。

天使の祝福を間近に見られて、俺の水分が久々流れ落ちそうだった。
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