俺はずっと片想いを続けるだけ**おまけ
俺がこの場だけの事情聴取で済んでウチに帰れるのは、こいつが持つ肩書きと証言のお陰だった。

それがなきゃ、多分俺は騎士隊詰所で怒りまくった親父の到着を待たないと、ダメだったと思う。


「君の機動力には負けるよ」

俺には機動力なんてないけど?
それにしても、こいつにはこの前からカッコ悪いとこしか見せてない。


2人の騎士がひょろ夫を引っ立てて行く。
俺を殺そうとした奴だけど、あんな女のせいで
人生終わるなんて、哀れで嗤うことも出来ない。


「お前は父親には何と説明するんだ?」


えっ、他の人いなくなったら、いきなりお前呼ばわり?

グレイスの旦那は爽やかな笑顔を引っ込めていて何、これ別人?
低めの声はドスが効いている。


「いつまでも親父に尻拭いさせたらあかんからな?
 チャラチャラすんのも、大概にしとけよ」


出たよ! 噂に聞いていた、グレイスの旦那の
西国言葉!
何でも留学先で西国のヤバイ奴と連れになって、そいつの影響で、今でも不機嫌な時はあっちの
言葉になる、って!
王宮勤めの兄貴を持つ友人から俺は聞いていた。


怒ってる? この人俺に怒ってんの?

旦那はそれ以上は何も言わず、離れたところに置いていたブーケを手にして、俺に振り向いた。


「ウチの馬車に乗っていくか、歩いて帰るのか、早く決めろ。
 俺は急いでいる」
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