俺はずっと片想いを続けるだけ**おまけ

後編

馬車の中でも旦那はブーケを放さず、丁寧な手つきで膝の上に置いた。

これから実家で一泊したグレイスを迎えに行く
そうだ。
その前に大通りの花屋に寄って、俺を見かけた
らしい。


結婚した嫁を迎えに行くのに、この人は花を持って行くんだな。
俺なんて口説いてる時しか、女に花なんて渡さないのに。
なんだよグレイス、大切にされてんじゃん……


「肩の骨折、痛みはどうなんだ?」

「……大丈夫。です」

慌てて語尾に、ですと付け足した。 
大丈夫じゃないけど、そう言っておいた。
……骨折してることを知られていた。


旦那は俺の顔を見てるけど、何を考えてるか
わからない表情をしていた。
その目、まじで怖いんですけど?


「妻が来月から復学するから」

グレイスは『ノー教科書はノンノンです』とか
言って、実家に取りに行ったらしい。
一文の中にノーとノンノンが入ってるなんて、
さすがグレイスの馬鹿。


「俺の妻を馬鹿にしたら……」

そう言いながら旦那は俺の方に身を寄せて、
すげぇ小さな声で言ったんだ
『コロス』って。

本当だ、嘘じゃない。

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