俺はずっと片想いを続けるだけ**おまけ
以上の事情からルイス、である。

ルイスは去年学園を卒業したが、卒園前に受験した下級文官試験には落ちてしまった。
血筋的にはイーサンの弟なので、申し分ないし、真面目なやつだ。

文官試験を落としたのに、お見張り役に採用した人事部長曰く、
『叩けば響くタイプじゃないのが好ましい。
殿下のお側に付けば、王宮のあちらこちらに顔を出すので、下手な野心がないのが採用の決め手』 だそうだ。


執務室に文官が飛び込んでくる。
今日も殿下は絶好調に、何処かへぶつかりに
行かれたのだ。


現在、王太子妃殿下は身籠られていて、ご予定日間近であられる。
それで殿下が近づいて来られた時は、妃殿下の
周りは前後左右4人の侍女が守っているのだが、やはり8人にと、進言するべきだったか!


殿下のご愛用貼り薬の匂いは遠くからでもわかるので、殿下シフトは直ぐに形成される。
それでも誰も想像していないところから殿下は
事故られるので、皆が気を抜いていなかったはず
なのだ。

殿下ご自身ではなく、ぶつかられた何かが妃殿下を襲うことも考えられたからだ。


野心がないのはいいが、いささかマイペースで
のんびりしているルイスは一体何を見張っているのだ。


どうかどうか、何か(もしくは殿下ご本人) が
妃殿下にぶつかったのでは、ありませんように。


妃殿下の御身に。
もうすぐお生まれになる王孫であられる御子様に。

もし何かあれば、ルイスは勿論のことイーサンや実家の伯爵家も、無事では済まないだろう。


祈りながら足早に進む俺の背中には、冷たい汗が流れた。
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