彼氏がいるけど年下の男の子を好きになりました。
警察がやってきた。
どんな人が捨てたのかを聞きにきたのだ。
「あの袋の中身は……」
「まだ捜査段階なので」
教えてもらえなかったが、わざわざ警察が来たということは犯人と疑ってのことだろう。
身長が百六十センチくらいの人で痩せ型で猫背だった、と高校生の子、水上昴君が丁寧に説明してくれた。
黒い大きなマスクやサングラスをしていたし、黒いニット帽を被っていて、顔や髪は一切見ていないし、黒のロングコートに黒いズボンで黒いスニーカーだった、と水上君はよく観察している。
「六十代以上だと思います」
そう私は証言した。若い人と姿勢が違った。
警察にどうしてあんなところにいたのかを聞かれて、「彼氏と別れまして……」と答えたら「自暴自棄になるんじゃない」とプチ説教された。
私には身寄りもなく泊めてくれる友人もいないと言ったら、「今日はウチに泊まっていきな」と水上君のご一家が泊めてくれた。
本当にありがたかった。
しっかり戸締りをして、普段は全員自室で寝るらしいのに、二階の一室に布団を並べて寝た。
全員が怖い想いをしているのだ。
翌朝には、死体がまた公園のゴミ箱で発見されたとニュースになっていた。右腕だった、と。
前回発見された死体とは血液型が違うらしいが、同一犯と見て捜査しているそうだ。
まだ犯人は近隣にいるだろうか。
「お姉さん、俺がいるから」
水上君だって怖いだろうに、私を必死に慰めてくれた。
私と水上君は犯人に見られている。
私がいなければ水上君は自転車で通り過ぎていただけだっただろうに。
私のせいだ。
優しい両親に育てられた、とても優しくて生真面目な水上君は私のせいで巻き込まれてしまったのだ。
事情を説明して仕事を休んだ。
職場から「あなたを呼んでほしいって黒尽くめの男が来たから、警察呼んだら逃げちゃった……」と報告された。
アパートの管理人さんにも連絡をしておいた。彼氏には黙っていてほしいと口止めもして。
そしたら、ニュースで言っていたような黒尽くめの怪しい男がアパートの前をうろうろしていた、と教えてくれた。警察を呼んだら逃げたそうだ。
ターゲットは私なのだろう。
三日がには、遠くの山の中で彼氏の死体が見つかったとニュースになった。
腕がなく、ゴミ箱に入っていた腕と一致したそうだ。
あの、私の職場やアパートの周辺をうろうろしていた人が犯人だろうと言われた。
私は崩れ落ちるように泣いた。
水上君が必死に慰めてくれた。
「お姉さんのストーカーが、お姉さんが外出した隙に彼氏を殺したのかな……?」
水上君が震えている。
近所にそんな人がいたら怖いに決まっている。
私が生きていてよかった、と水上君は泣いて喜んでくれた。
水上君の両親も「あなたを家に帰していたらどうなっていたか……」と、私が無事なことを喜んでくれた。
そして私の周囲をウロウロしていた黒尽くめの男は、真冬の雪の降る日に川に浮かんで亡くなった。
川辺を散歩中に足を滑らせたのだろうとニュースで言っていた。
一人暮らしの自宅には、解体に使った道具やらがあったから犯人に間違いないだろう、と。
世の中の人たち皆がほっとした。