【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

三十

「街の入り口に来るのが遅いから、迎えに来たよ。エルモ」

 グルはエルモの腰に手を回して連れて行こうとした。それを阻止するかのように、アルベルトは声を上げる。

「はぁ、なになに? エルモ、一丁前に男だと! ハハハッ、うける!」

 アルベルトはグルとエルモを茶化す様にお腹を抱えて笑った。
 ムッとしてアルベルトに突っかかろうとして、グルに止められる。

「グルさん?」
「エルモは行かなくていい、ここで待っていて」

 グルはエルモから離れると、アルベルトに近付いた。

「すみません。騎士様はエルモと知り合いかは知りませんが。俺の大切な恋人ですので、気軽に呼び捨てにしないでください」

 グルにビシッと言われても、ヘラヘラと笑うことをやめないアルベルト。
 二人はしばらく見つめ合い、アルベルトは品定めをする様にグルを見つめた。

「へぇ~、お前がエルモの恋人か……なんだか、頼りなさそうだな。エルモ、こんな奴よりも俺の方があいつを知っているし、お前を守ってやろうか?」

「………え?」

 ――アルベルトが私を守る? 
 ――友を傷付けたアルベルトが!
 
「いやっ、結構です……騎士様に守っていただかなくても、彼が守ってくれます。帰りましょう、グルさん!」

「……おい、エルモ?」

 何か言いたそうなグルの手を握り、アルベルトに背を向けた。その背にアルベルトは笑いながら。

「おい、エルモ帰るのか? ……まぁ、いいっや~。また明日、会いに来るよ」

「来ないで!」
「ハハハッ、そう嫌がるなよ~! またな」

 何を考えているかわからないアルベルトは、手をひらひらと振り帰って行く。グルはそんなアルベルトの姿が見えなくなるまで見ていた。

 ――アルベルトのあの態度。これは、グルさんに説明をした方がいいよね。ここに来る前は公爵令嬢で婚約者がいたと。
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