【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 できあがったポトフ鍋を魔法コンロの上に置き、もらったパンを焼き、レタスとベビーリーフのちぎりサラダにとりかかる。

 グルは手伝うよと手を洗い、横にならびレタスをちぎりはじめ。
 
「……これも、エルモのおかげだな」

「え、私のおかげ? 私は何もしていないよ……ただ、グルさんを好きになっただけ……だし」

 ヘヘッと照れ笑いをするエルモをみて、火の精霊はポッと頬に火がつき"キャー、キャー、黒ちゃんが好きだって!"と騒ぐ。

 そして、グルは大いに照れてレタスをひと玉ちぎってしまった。

 ポトフとパン、大皿に山盛りのちぎりサラダ。

「ご、ごめん」
「レタス好きだから、たくさん食べられるわ」

 二人で仲良く食べきった。

 





 アルベルトが所属する騎士団が魔物狩りにでて、パン屋に来なくなったのはいいのだけど。

 さいきん、バイト先のパン屋に不思議な人がやってくる。

 シャツとスラックス、緑の長い髪とエメラルド色の瞳、顔はイケメンで身長は高いから、女性のお客はみんな彼をみて「カッコいい」と、頬をそめた。

 
「エルモちゃん。メロンパンさん、また来ているわね」

「ほんとうですね。ぜったい、焼きたてのメロンパンを待っているんですね」
 
 サクサクのクッキーと、フワフワなメロンパン。
 
 最近訪れるようになった、そのお客はメロンパンがそうとう好きらしく。

 十二時に焼きあがる、メロンパンを求めて早朝から店にやってくるのだ。
 
「おーい、メロンパンが焼きあがったぞ!」
「はーい! 焼き立てのメロンパンです!」

 その人はすぐにトレーをもち、焼き立てのメロンパンを毎日十個買って。

 やさしげな瞳でレジ打ちをするエルモをみて「おすそわけ」と言って、三つ置いていく。

 そのことをグルに伝えて、いちど店に見に来てもらったのだけど。

 グルはそのメロンパンさんをみたとたん、ああ、と、うなずき。

『あの方は大丈夫。エルモ、嫌がらずにメロンパンをもらってやって』

 といった。

 エルモも、メロンパンは美味しいからいいのだけど。

 お金とか体重が……三キロもふえてしまい困っている。
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