【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 じっさいは友達ができて、楽しい学園生活を送り。薬を作る必要はなかったから、そのイベントも起こらず、平和に学園を卒業して半年以上は経つ。

 いまになって、こんな夢を見るなんて……なにかの前兆?

「どこか具合が悪いのか?」

「え、大丈夫。ただ、怖い夢をみて驚いただけだから……平気だよ」

 心配そうに隣で見つめる、グルに微笑んだ。

「それならいいけど。今夜の満月の宴――体調が悪かったら無理せず、俺にいうんだぞ」

 コクンと頷く。

「うん、わかった……ふ、ふわぁ、まだ五時だね。今日はバイトも休みだし。もう、すこしだけ寝ようかな?」

「おお、寝よう。エルモが怖い夢をみたら俺が起こしてやるから、安心しろ」

 チュッと頬にキスされて、エルモはグルに守るように、優しく腕のなかに抱きしめられた。

「グルさん、ありがとう」

「おう、もっと引っ付いてもいいぞ」
「いいの? そうさせてもらう」
 
 グルにすり寄り眠る――私、いま幸せなの。

 だから、人々を苦しめる怖いクスリを作ろうだなんて、思わない。

 





 エルモはこのあと夢見ることなく、二人は朝寝坊していた。

 そこに"唐揚げとカツの味"が忘れられない、グレが玄関を元気よく開けた。

 時刻的に、二人は起きているとおもっていた。

「おっはよー! エルモちゃん、グル! 唐揚げとカツ作ろうぜ! ……って。お前ら、まだ、寝ていたのか?」

「ん、寝ていた。ふわぁ……おはよう、兄貴」
 
「おはよう、グレちゃん」

 まだ眠そうで、寝癖の二人。
 時計の針は十時を過ぎていたのだった。
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