【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

四十二 アルベルト

 クソッ――アルベルトは魔物討伐の遠征が終わり、久しぶりに王都に戻ってきた。

 その足で、エルモをからかいにバイト先の街までやってきたのだ。
 
「……チッ、パン屋が休みなら仕方ねぇか、また明日にでも来るかな」

 騎士団の寮に戻る前にアルベルトは思い出す。そういや、寮に戻っとき寮長にもらった手紙があったな。

(誰からきたんだ? お、差出人はリリアちゃんか)

 アルベルトは近くの壁に寄りかかり、手紙を開き内容を読んた。リリアからの手紙にアルベルトは眉をひそめる。

「おいおい、リリアちゃん……白と黒の精霊獣か、なんでもいいモンスターの血が欲しいとか……物騒だな」

 だが、リリアに血を渡せば近衛騎士として、雇ってもいいと書いてある。アルベルトは口うるさい父と、できのよい兄貴から離れてたかった。だから遠く離れたファーレズ国の貴族との婚約を受けたのだ。

 学園でリリアにうつつを抜かして、婚約者から婚約破棄されなければ、いまごろ伯爵家の当主になっていた――後悔先に立たずだな。

 魔物の血か……討伐した魔物は魔導師達が回収してしまったし。他の魔物を狩らなくてはならない。魔物が出そうな森か……しかたがない寮の書庫で地図でもみるか。

 寮に帰ろうとした俺を誰かが呼び止めた。
 
「あ、アルベルト様。こんなところで、なにをしているのですか?」

「ん?」

 振り向くと、同じ騎士団に所属する平民出身のヨリが、手にたくさんの袋を持っていた。明日は休みだから街に買い物にきたのか。

「なんだ、ヨリか。パン屋に来たが休みだったんで、帰ろうとしたところ」

「ああ、ここにアルベルト様の気になる子がいらっしゃるんでしたっけ? 可愛い方ですか? こんど僕にも紹介してください」

「紹介って……お前、婚約者がいるって言っていなかったか?」

「ええ、婚約者はいますが。とても小さな村でして、まわりに何もありませんし。せっかくサーティーア騎士団に入って幼馴染と結婚は夢がありません」

「そうか……」
< 124 / 179 >

この作品をシェア

pagetop