【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 宴の二日前。シルワはグレだけを呼び、そのことを伝えた。

 闇の力を持つグルとは違い、グレの血は光の力を授かっているため、毒草に触れさえすれば浄化することができる。
 
 しかし――その力を使うにはグレにも愛するものが、いなければならない。

(ワタシは酷なことを……グレに聞くなんて)

「オレに愛するもの?」
 
「そうです……昔のことを蒸し返すようなことを言って、すみません」
 
 グレに愛する人がいなければ、シルワはちょくせつ手を下そうと考えている。

 人と関わる、それは大精霊としての地位がなくなることを意味する。
 
 二人を助けれるのなら、それでもいい。
 シルワにとって、二人はケンゾクで大切な家族だ。

「ですから、私が……」

 "行きます"と言う前に。

「シルワ様、オレは昔のことは気にしていない。その、最近だけど好きな人もできたよ……オレの力が役に立つのなら使う! グル、エルモちゃんを守りたい」

 笑いながら言うグレ。

「ありがとう、グレ。加護魔法、防御魔法……転移魔法を授けます。毒草を見つけたら浄化して戻ってきなさい」

「わかりました。必ず見つけて浄化してきます」

 シルワはグレにたくして、ありったけの魔法をかけた。


 
 満月の宴も中盤。
 早くからお酒を飲み騒ぐ村のみんなと、楽しく酒を飲んでいたグルだが。ひときわ騒がしいグレの姿がないことに気付く……

 胸騒ぎがして、グルはシルワを探した。

「シルワ様、グレはどこに行ったのですか?」

「グレですか? 彼はとある役目を託しました」

「え?」
 
「グル、愛するエルモちゃんを守りなさい。魔法をつかい、グレのあとは追わないように……絶対ですよ」

 いつになく真剣なシルワに、グルは何も言えなくなった。
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