【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「ガオオオォ――ン!」
「はい、はい。手紙に黒か白って書いてあったな。森の中にこいつ以外、魔物はいないし。こいつの血をリリアに渡せばいいのか?」
オレの血をあの子に渡す?
奴が懐からだした手紙と一緒に匂いがした。この匂いをオレは知っている。
マジか、さっきシルワ様の話に出てきた人間とは、リリアのことだったんだな。
だけど、あの子はなぜ毒草を手に入れた?
なんのために?
「おい、人間! そのリリアとかいう人は、何をしようとしている!」
「ん? お前、人の言葉が話せるのか? へぇ面白い魔物だな。これは、珍しいもの好きな貴族に高く売れるな……よし、捕まえるか」
――し、しまった、焦ってしゃべっちまった。
「ニヒヒ、どうやって捕まえるかな?」
「ケッ、そう簡単に捕まるかよ!」
オレは男と距離をとった。
いま、グレとアルベルトが村の外で対峙している。
双子の片割れのグルはそれがわかり、グルのそばに飛んでいきたかった。
だけど、アイツはエルモを狙っていることを知っている。
――この、一瞬の隙が命取りになる。
大精霊シルワは、グレにありったけの魔法をかけたといっていた。
兄貴だってバカじゃない、危なくなったら逃げてくるだろう。
大切なエルモがアイツに捕まったら……二度と会えないような気がする。
どこか俺の手の届かない、遠いところにいってしまいそうで……グルは怖かった。
「グルさん?」
心配そうに俺を見つめるエルモに、鼻でスリスリして大丈夫だと伝えた。
だけど、エルモは俺の首に抱きつき。
「グレちゃんが心配なんでしょう? 行ってきて、私はここでみんなといるから……」
そうエルモは言ってくれたけど、グルは首を振る。
「いや、いかない。俺はエルモのそばにいる。グレのことは心配しなくていい……兄貴は強い」
そう、俺よりも強いんだ。