【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

四十七

 グルはエルモに"平気だ"といったが、小さく「アルベルトの、やろう」と、苦し紛れにつぶやいた。

(……アルベルト? いま、そう言ったわ)

 エルモにさんざん"捕まる"と言っていた、アルベルトがグレちゃんを捕まえたの? 

 ――なぜ?

 グルの態度と宴からいなくなったグレ。
 夢にみた……ソソル草、モンリス草――ゲームで「熱病」を起こす毒草。

 記憶が曖昧だけど――「熱病」には黒い精霊獣グルと、白い精霊獣グレが関わっていたはず。

 いやな胸騒ぎがする……ソソル草とモンリス草が「熱病」を起こすと知っているのは――この乙女ゲームを知っている、転生者の私とあの子ーーリリアだ。

 まさか、皇太子妃となるリリアが「熱病」を引き起こそうとしているの?

 ――なんのために?

「ダメよ、グルさん! グレちゃんを一人でいかせてはダメだわ!」
 
「エルモ?」

 グルは追いかけたい気持ちを抑えて、私を守ろうとしてくれている。

 でも、リリアとグレが会えばまた彼女はグレを傷付ける。
  
「リリアさんに会ったら……昔のようにグレちゃんが傷付いてしまう」

 エルモは、グルの胸にしがみつき叫んだ。

「……え、むかし? どうしてエルモは兄貴を傷付けたのが、リリアだと知っているんだ?」

 あっ!

「そ、それは……そんなことより、はやくグレちゃんを連れ戻さないとファーレズ国だけじゃなく、ここでも「熱病」が起きてしまうかもしれない!」

「熱病?」

 コクコク、グルに頷いた。
 エルモは治し方が思い出せない、みんなが病魔に倒れてしまったら治せない……
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