【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 二人はなぜか見合って照れでしてしまう。
 その二人を近くで寝っ転がり、見ていたグレは大ため息を吐いた。
 
「……ハァ、お前らはどこにいとも初々しいなぁ。まあ新婚だから仕方ねぇか、うらやましい!」

 ――新婚?

「まだ婚約だ!」
「まだ婚約です」

「いや、二人のその雰囲気は、もう結婚したといってもかわらねぇ」

 うんうん頷き、なっとくしながら話すグレ。

(グレちゃんがそう言ってくれるのは嬉しい。いつかはグルさんのお嫁さんになりたいもの)

「エルモと結婚か――はやく、ゴタゴタが終わって村にかえったら、すぐに結婚式を挙げたい。二人で採取に出かけ、たまに旅行にいって美味しいものを食べ、古本屋巡り、きれいな花も見たいし、行ったことがない海がみたい」

「海? いいですね。私もグルさんと色んなところを見てまわりたいです。あ、グレちゃんも一緒にね!」

「オレも?」

 公爵令嬢のときは王妃教育のため王都と屋敷の往復だったから、旅行なんて行ったことがない。自由になったのだから、いろんな国を見てまわりたい。

(そのためにはバイトを頑張らなくっちゃ)

「……グル、俺達はいい子に出会ったな」

「そうだな。幸せにして、一生たいせつにする。いつか、子供も欲しい」

「子供か二人に似てかわいいだろうな。幸せにしてやれよ。そして、ぜったいにエルモちゃんを離すなよ!」

「トウッ!」と、グレはグルに飛びつきじゃれる。エルモは仲のよい兄弟をみてほっこりした。

 
 そのグルと戯れる、グレが声を上げる。

「グル、エルモちゃん、そのためにはシルワ様が言っていた、毒草を消すぞ!」

「「おう!」」



 ちかくの街に移動して荷馬車を一週間借りた。まだエルモ達はファーレズ国の国境を超えたばかり、王都までは急いでも三日、四日はかかるだろう。

 荷馬車の操縦席で地図を広げたグル。

「王都までけっこう遠いな……俺が精霊獣のままか、ファーレズ国の王都に行ったことがあれば転移魔法が使えたんだけど…… こればかりは仕方がないな」

 と、荷馬車を動かした。

「グルさんのおかげで、ファーレズ国まですぐに来られたわ。本当ならいくつも国を越えなくてはならなかったから、一週間以上はかかっていたわ」

「そうだ、夜通し走ってくれたグルのおかげだ。怪我なく移動しようぜ――弱々アルベルトから「リリアの手紙」と「リリアからの招待状」を盗んだんだし、ニシシ」

 アルベルトから、リリアの手紙と招待状を奪った?

「そうだな、兄貴。王城にその招待状で怪しまれずはいれるな、ニシシ」

 グレとグルは、そろって悪い笑顔をみせた。
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