【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「だったら、なぜ? 君は兄貴からの好意をなぜ返した? 鼻を擦り合わせの挨拶、頬すりは俺たちにとって愛情表現だ――君は兄貴となんどもしたよな」

「そんなことが、愛情表現だなんて知らないわ」

「はあ? そんなこと? 知らない? あれほど好意がないのなら"やめなさい"と、ばっちゃんが君に忠告しただろう! それなのに君はやめなかった……」

 ひときわ黒い霧がみえて、私は手を伸ばして彼を後ろから抱きしめた。
 
「だめ、グル……落ち着いて」
「……エ、エルモ?…………う」

 ――うっ?

「ウゲッ、その低い男の声……アルベルトの姿で抱きつくなよ。エルモのいい香りはするけど……体が、柔らかくない」
 
「はあ? いま大変な時に何を言いだすのグル。仕方ないでしょう、いまは男になっているんだから、そんなこと言わないの」

 グルの顔と口が歪んだ。
 そうとう、アルベルトが嫌いらしい。

「もう、我慢できない……怒りの感情がおさまらない。俺、エルモは抱きしめられたい」

 こ、こんなところでワガママァ?

「ちょっ、ダメ。やめて、グル」
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