【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 グルはエルドラッドに見せつけるように、私にキスした。

「んっ、ちょっ、グル……」

「なんだ照れたの? その照れるエルモの可愛い顔を、ソイツには見せたくない」

 と、腕のなかに隠してしまう。

「グル?」

「おい、エルモ顔をだすな、ヤツにみえる」

「フフ、やめて」
「いやだ、やめない」

 エルドラッドをそっちのけで、グルの腕のなかに収まる。彼がきて、緊張していたからか、グルの体温と香りで落ちついた。

「お、おい、そこのお前……エルモに近付くな! それと、さっきから二人で何を話している? 僕にもわかるように話せ!」

 ――え? 

「まあ、皇太子殿下は私達の話している内容がわからないのですか? この言葉は殿下も習っているはずのサーティーア語ですわ」

 驚いた振りと嫌味をいい、すこし仕返しすると、殿下は言葉を詰まられせた。

「…………え、サーティーア語? すまない」

「そうでしょうね……私が一人でサーティーア語を習っているとき、あなたはリリア様とご一緒でしたもの――」

 忘れもしない。

 サーティーア語を習った帰り――「何しにきた、帰れ!」と、リリアの腰を抱き寄せながら怒鳴られたことを。

「フフ、いまとなっては昔のことですわ。お気になさらず」
 
 エルドラッドはさらに"ウグッ"と言葉をつまらせた。
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