【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
五十九
「……エルドラッド皇太子殿下は、図星で言い返せませんわよね」
エルドラッドはリリアの部屋に慌ててきたのだろう、執事と側近だけを連れて護衛の騎士を連れずにきたのが幸い。
いまのうちに、毒草を消してグルの転移魔法でとっとと逃げる。
「もう、エルドラッド皇太子殿下と話すことはないですわ。グル、グレちゃんいきましょう」
「ああ、いこう。あれ? 兄貴? 兄貴がいない」
さっきまで、そばにいたグレの姿が見えない、グルが呼ぶと隣の部屋から声が聞こえた。
〈オレはとなりの部屋にいるぞ。その子が使った道具と集めていた毒草は全て消したよ……結構な量の毒草があったからたいへんだった……グルのポーションあとでちょうだい〉
「わかったよ。兄貴、ご苦労さま。これでシルワ様に頼まれた用事は終わったな……俺たちの家に帰ろう」
「ええ、かえりましょう。グル、グレちゃん」
〈帰ろう、村のみんなもオレ達の帰りを待っている〉
部屋をあとにするまえ「さようなら」の意味も込めて、エルドラッドに向けシャツをスカートに見立ててもって頭を下げた。
――二度と会わない。
「ま、待てエルモ。どうしてだ? あんなになりたかった王妃にもなれるのだぞ。この機会を逃したらもう二度となれない」
王妃? と。どんな言葉にもなびかないエルモに、エルドラッドは不思議そうな瞳を向けてくる。
あなたにはわからないでしょう。愛していた人に冷たくされて、罵られて、突き放された人の気持ちが。
「エルモ、大丈夫か?」
心配そうに見つめるグルに微笑んで、手をにぎる。
最愛の人。
離れたくない人。
これから一緒に歩く人。
エルドラッドはリリアの部屋に慌ててきたのだろう、執事と側近だけを連れて護衛の騎士を連れずにきたのが幸い。
いまのうちに、毒草を消してグルの転移魔法でとっとと逃げる。
「もう、エルドラッド皇太子殿下と話すことはないですわ。グル、グレちゃんいきましょう」
「ああ、いこう。あれ? 兄貴? 兄貴がいない」
さっきまで、そばにいたグレの姿が見えない、グルが呼ぶと隣の部屋から声が聞こえた。
〈オレはとなりの部屋にいるぞ。その子が使った道具と集めていた毒草は全て消したよ……結構な量の毒草があったからたいへんだった……グルのポーションあとでちょうだい〉
「わかったよ。兄貴、ご苦労さま。これでシルワ様に頼まれた用事は終わったな……俺たちの家に帰ろう」
「ええ、かえりましょう。グル、グレちゃん」
〈帰ろう、村のみんなもオレ達の帰りを待っている〉
部屋をあとにするまえ「さようなら」の意味も込めて、エルドラッドに向けシャツをスカートに見立ててもって頭を下げた。
――二度と会わない。
「ま、待てエルモ。どうしてだ? あんなになりたかった王妃にもなれるのだぞ。この機会を逃したらもう二度となれない」
王妃? と。どんな言葉にもなびかないエルモに、エルドラッドは不思議そうな瞳を向けてくる。
あなたにはわからないでしょう。愛していた人に冷たくされて、罵られて、突き放された人の気持ちが。
「エルモ、大丈夫か?」
心配そうに見つめるグルに微笑んで、手をにぎる。
最愛の人。
離れたくない人。
これから一緒に歩く人。