【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 三人が目を覚ましたら、もう夕方になっていた。
 
 街で食べ物を買って近くの森に移動して、一晩明かし。

 早朝――精霊のいないファーレズにいてもしかたがないと。荷馬車を借りた村にむかい、ポーション、薬草で得たお金で荷馬車を買って、ファーレズとダンリズの国境を越えた。

 隣国――ダンリズは農業国。

 国境を超えてすぐに広い小麦畑、ジャガイモ畑、キャベツ畑などがみえた。グルは御者席でダンリズ国を見回してうなずく。

「この緑豊かな国なら精霊がいるな――エルモ、村にかえったら、すぐにでもチェリチタの木の下で挙式あげよう」

 グルの言うとおり。ダンリズ国にはいったすぐの森で赤い花をあたまに咲かせた、花の精霊をみつけた。

 その精霊に声をかけて、シルワ様からもらったチェリチタの花をみせる。

「花の精霊、俺たちをこの花のところまで送ってくれ」

〈この花のところ? チェリチタの花……はい、は~い〉

 赤い花を咲かせた、手のひらサイズの精霊は、ふんふんとフェリチタの花の周りを飛び。

〈サーティーアのシルワ様のところですね~かしこまりました~。ラララ~ ルルル~〉

 精霊は陽気に歌い、小さい杖を振りサーティーアまでの入り口をひらいてくれた。

〈よし、よし開いたよ~ ……でもね。その、大きいのは無理だから貰ってもいい? この森の大精霊チーチ様にあげる〉

「いいよ、自由に使って。兄貴、エルモ、俺たちの国に帰ろう」

「ええ、帰りましょう」
「帰ろう!」


「「花の精霊ありがとう」」


〈どういたしまして~〉

 エルモたちは荷馬車を精霊に渡して、サーティーアへの入り口を通ると。
 すぐに森の景色は変わり、エルモ達はみなれた"精霊の森"の前につく。

「ふうっ、帰ってきたな……シルワ様への報告は明日。家に帰って風呂にはいって寝よう」

「そうしましょう」
「オレはいま寝る……エルモちゃん抱っこ」

 グレを抱っこすると、すぐに寝息をあげた。
 その様子をみて「兄貴、ごくろうさま」と伝えた。

 獣人はいちど番――愛する人をみつけると。
 一生、そのつがいを想い、守り、大切にする。

 しかし、グレは"リリア"という番をみつけたが拒否された。一方通行の想い……それはつらく悲しいこと。
 この旅でグレはリリア――番との別れをしてきたのだ。

(道中でも、リリアと会ったときも、グレちゃんはそんな素ぶりひとつも見せなかった……グレちゃんは強いな)

 私だったら……

「泣くな、エルモ。お前だって、番とお別れしたんだからな――辛かったろ」

 ――えっ。

 私の番? エルドラッドのことを言うのだろう。彼へのわだかまりは全て吐きだしてきた。

 もう、未練もなにもない。

「ありがとう、グル」

 グルの転移魔法で家に帰って、お風呂……の準備はできず。二人はベッドに倒れこんで眠った。
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