【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 エルモはベッドからでようとしたけど、男の腕が体に回されていて身動きが取れない。

 どうするかを迷っているうちに、窓から入る朝日が眩しいのか眉をひそめて男の目が開き。
 
「んっ、ふぁ、あ? あぁあ――? ……お、お前は誰だ?」

 隣にいるエルモに驚き腕の力が抜けた隙に、かけ布団を引っ張って窓際まで逃げたから。パンツ男が目の前に……あらわれた。

「きゃっ、パッ、ンツ! あ、あなたは誰ですか?」

「ん? 俺か、俺はこの家の持ち主だけど」

 この家の持ち主?

「嘘よ」
「嘘じゃない!」

 ……ははん、わかった。

 この人はこの家に勝手に住んでいて、嘘をついているのね。

「違います。この家はきのう地主のおばちゃんにもらった私の家です」

 男はもらった家と聞き『……ばっちゃん、またかよ』と起き上がり頭をガシガシかいた。

「……まったく、ばっちゃんめ、しばらく薬草摘みに行くから家を開けると伝えたのに……もう、何回目だよ! 独り身を案じてくれるのは嬉しいけど、今回のはダメだろう」

 と、この男はブツブツ、独り言をいいだす。
 エルモは男の言葉に引っかかる。

「しばらく薬草摘み? 家を開ける? この家って何年も前から空き家じゃないの? 嘘をついているんじゃないの?」

「嘘じゃない、もう一度いうけど、この家は空き家ではなく俺の家だ!」

「あなたの家なの? そ、そんな……いい家を貰ったと思ったのに……」

「ハハッ、残念だったな。ここは俺、魔法使いの家だからな」

「……ま、魔法使い?」
 
 うそ。攻略者にいた魔法使いは貴族だったけど、この人は家をみる限り普通? 

 国の魔法省にも勤めていなさそう。
 国が違うと、魔法使いの扱いも違うのかも。
 
 たしか授業で魔法使いは「薬草などで薬を作り、火水風地属性の魔法を操る」と習った。
 魔力測定もしたけど、学園では基礎しか習わず、魔法はまだみたことがない。
 
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