【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「ホッホ、そうじゃが。こうでもせんとグルは奥手だからの」
「おく……それは関係ないだろう、ばっちゃん!」

 地主のおばあちゃんは「ふおっ、ふおっ」と笑ってばかりで、グルの言葉に聞く耳を持たない。
 
「それにばっちゃん。こんな可愛い子に俺なんかが手なんて出せるかよ」

 その反応におばちゃんはニヤッと笑う。

「グル、本音をポロッと言ったの。エルモを可愛い子じゃと、ふぉっふぉっ、わしの目は狂っていなかった………エルモからグルと同じ良い気を感じとったんじゃ、お似合いの二人じゃと、めでたい、めでたい」

(グルさんとお似合い? どうしよう、おばちゃんは喜んでいるけど……)

「……おばちゃん、私は」

「こらっ、ばっちゃん。エルモを困らせるな……それに俺にはまだやる事がある」

 と、いうグルにおばちゃんは眉をひそめた。

「だけどよ、グル………そのことに関してはダメでもいいんじゃよ。村の連中もみんなそう言ってるでよ」

 そうおばちゃんが言っても、グルは首を横に振る。

「俺はぜったいに諦めない!」

「………そうか、お前ばかりに無理をさせるのは忍びない」

「大丈夫だよ、俺は一人じゃ無い」

 二人は話していくうちに家の話から変わり……悲しい表情を見せはじめた。
 これ以上は部外者が聞いてはダメな話なのかも。

「…………」

 あの家で新しい生活を始めたかったけど、あの家はグルの家だ。

(これ以上は、迷惑かけちゃいけない)

 しかし、エルモには住む場所はない。
 いまは頼むしかないと、二人の会話にはいる。
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