【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「エルモはなに笑ってんだ?」

「べっ、別に」

 グルに手を握られたままエルモは村へと帰った。

 村に入っても繋がれた手は離されなくて、とうとう家までグルと手を繋いだ。玄関の扉が乱暴に閉められ、その手は一段と強く握られて。

「エルモ、あんな場所で働く気だったのか?」

 開口一番に怒鳴り声を上げたグルに、
 そうだと言ったら、また怒鳴られた。

「ダメだ! あんな酒場で働くぐらいなら仮住まいじゃなく。もう、ここに住め! 働きたかったら昼間だけ働いて……あとは俺の手伝いをすればいい!」

 怒ったグルに「ここに住め」と俺の手伝いしろと言われた。

「住んでも、いいの?」

「いい、この言葉に二言は無い! 帰る所がないのだろ? 何かあったら、この村の人かばっちゃんを頼ればいい」

 ――ほんとうに?

 グルの優しさにポロッと涙が落ちた。
 この涙はエルモにとって久しぶりの涙だった。

 寂しくても、泣かないように我慢していた――新しい国は何処か楽しみだけど、何処か不安もあり緊張もしていた。

「おい、エルモ泣くことかよ!」

「もう、グルさんのせいだよ。嬉しいの……ありがとう、グルさん。本当にありがとうございます」

「……わかったから、泣くなよ」
 
 こうしてエルモはしばらくの間、グルの家に居候させてもらうことになった。
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