【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

 腹減ったなと、グルが買ってきたパンで、夕飯を二人で軽くとり、
夜も更けたころ、二人はベッドの前でもめた。

「エルモが使え」
「グルさんが使って」

 ことの発端は、

「わたしは床で寝るのでベッドはグルさんが使ってください」

 そのことばに反発したのはグル。

「いや、エルモがベッドを使え」

 と真っ向から衝突した。  

「いいえ、グルさんのベッドです」
「俺は床でもどこでも寝れる」

「…………」

 エルモは言い争いが嫌で一掃のこと「一緒でもいい」とグルに言ってしまったのだ。
 この、エルモの言葉に驚き固まるグル――そして、口がわなわなと震え目が座った。

「お前がいいって言ったんだからな、まあ、俺からは手は出さないけどな」

「わ、私だって出しませんよ」

 ベッドは一緒に使うと売り言葉に買い言葉で決まった。
 だけど、グルは明日から二、三日採取でいないと言っていて。また、帰ってきても直ぐに用事で出かけると言っていた。






 


 エルモがグルと暮らし始めて、一日目。

(……ん、温かい)

 朝日と温かなぬくもりで目が覚めると、昨日の夜はお互いに背中合わせに寝たはずなのに、グルはエルモを後ろから抱きしめて眠っていた。
 グルの腕の中は心地よく、不思議とエルモを温かな気持ちにさせてくれた。

(まだ寝てる?)

 エルモは寝返りを打ち、近くで眠るグルの寝顔を、しばらく眺めた。
 とつじょ眉間にシワが寄り、グルのエメラルド色の瞳が開き。

「何、見てんだ?」

(あなたの寝顔を見ていたなんて、言えるわけがない)

「べ、別に……お、おはようございます」
「そう? おはよう」

 恋人同士でも無いのに一緒の布団で眠る、ちょっと変なエルモとグルの関係だ。
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