【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
十二(グル)
昨夜。グルは森の中で木に背を預けて、ひとり月を見上げていた。
「もうすぐ満月か……」
明日か明後日にでも月は満ちて丸くなる。
俺はエルモのことをどうするか考えていた。
ーーこのとき。
〔グルさん、おやすみなさい〕
エルモに渡していた通話カードから彼女の声が聞こえた。
〔おやすみ、エルモ〕
寝る前のあいさつだけで終わるかと思った通話はつづき、エルモは街のパン屋で働くことを伝えた。
二人で他愛もない話をして。
もう一度「おやすみ」と通話はきれた。
「…………」
いつもなら一人でも平気な夜が寂しく思えた。ほんの数時間はなれただけで俺はエルモに会いたくなる。
(こんな気持ちは始めだ、みんなはこんな時どうする?)
押して押しまくるのか。そんなことをしてエルモに嫌われてしまったら、俺は立ち上がることができなくなる。
いや……その前に俺のことを知ると、エルモは逃げて行くかもしれない。
いや、前にばっちゃんはそうならないと言ったけど……俺はその言葉を信じたい。
「よし、家に帰ろう」
この森に兄はいないし。
たまに悲しい瞳をするエルモを守り、抱きしめて眠りたい。
――エルモがくれる安らぎは心地よい。
――目覚めるとエルモが側にいる、この幸せを手放したくはない。
「兄貴もあの子に裏切られる前は、こんな気持ちだったのかな?」
「もうすぐ満月か……」
明日か明後日にでも月は満ちて丸くなる。
俺はエルモのことをどうするか考えていた。
ーーこのとき。
〔グルさん、おやすみなさい〕
エルモに渡していた通話カードから彼女の声が聞こえた。
〔おやすみ、エルモ〕
寝る前のあいさつだけで終わるかと思った通話はつづき、エルモは街のパン屋で働くことを伝えた。
二人で他愛もない話をして。
もう一度「おやすみ」と通話はきれた。
「…………」
いつもなら一人でも平気な夜が寂しく思えた。ほんの数時間はなれただけで俺はエルモに会いたくなる。
(こんな気持ちは始めだ、みんなはこんな時どうする?)
押して押しまくるのか。そんなことをしてエルモに嫌われてしまったら、俺は立ち上がることができなくなる。
いや……その前に俺のことを知ると、エルモは逃げて行くかもしれない。
いや、前にばっちゃんはそうならないと言ったけど……俺はその言葉を信じたい。
「よし、家に帰ろう」
この森に兄はいないし。
たまに悲しい瞳をするエルモを守り、抱きしめて眠りたい。
――エルモがくれる安らぎは心地よい。
――目覚めるとエルモが側にいる、この幸せを手放したくはない。
「兄貴もあの子に裏切られる前は、こんな気持ちだったのかな?」