【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

十五

 エルモは真横から飛びでてきた、小さく白い塊を受け止めようとした。

 だけど、その塊は大きさの割にはずっしりと重く、受け止めたエルモの体は傾き、グルによって受け止められた。

「エルモ、大丈夫か?」

「は、はい」

「ギャオーン」

 エルモの胸元で元気よく鳴いた小さな白い塊には、シマシマ模様の耳と、お尻に揺れる長い尻尾があった。 

 ――トラ?

「かわいい、子供のトラ?」

「ゲッ、あ、あに……き…………精霊の森に帰って戻っていてのかぁ! 俺はあに、き、を探してあちこち探し回ったんだぞ! ……それに、その傷はなんだ?」
  
(グルさんの言う通り、子トラちゃん怪我をしているわ)

「ニギャーッ」

 グルは子トラを私の胸から引き剥がそうとしたが、子トラは離れるのは嫌がり、グルの掴んだ手をガブガブ甘噛みした。

「イテッ! いてて、クソッ! どれだけ探したと思ってるんだ! みんなも心配してるんだぞ!」

「ギャー、ギャー」

 子トラは鳴きエルモの胸から飛び降りて、グルの足元にじゃれつく。グルも嬉しそうに足元の子トラを捕まえて、回復魔法で怪我を治した。

(……二人の中に入れない)


 その光景をポツンと一人眺めていた。
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