【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「フフッ、もふもふ、ふわふわ」 

「キュー」

「あっ、グレ! てめぇー、俺がエルモにやってないことを先にするなぁ!」

 子トラとエルモの頬すりを見たグルは声を上げて、子トラをガシッと両手で掴み引き離そうとした。

 しかし、子トラは離れるのを嫌がり、鋭い爪をだして服にしがみ付いた。

「あ、グルさんま、まって子トラちゃんの爪が服に引っかかって、このままだとやぶけちゃう!」
 
 と、叫んだと同時にワンピースの胸元がビリッと破けた。

「あ、お気に入りのワンピースだったのに……」 

「ご、ごめん……グレ、その爪を引っ込めて離れろ!」

「ギャオーン」

 子トラは謝るどころか楽しげに鳴き、グルに飛びかかるけどグルがひょいと避けて、近くのエルモに飛びつく。

「グレ、離れろ!」
「ギャオン」

「フフッ」

 こんどはエルモも二混ざって、子トラとのじゃれあいを楽しみ、気付けば日が暮れていた。
 ふと、みあげた夜空には満月に近い月と、夜空を埋め尽くす星々が三人を照らしている。

 ――その夜空をみてエルモは歓喜の声をあげた。

「うわぁ、星がこんなにも夜空を照らしてるわ」
「星? エルモははじめてこの夜空を見たのか?」

「うん、グルさんの家からもたくさんの星は見えるけど、こんなに輝く星々を見たのは初めて」


 夜空をみあげながらエルモは昔を思いだす。
 
 一度だけ夜空を見たいと庭にでて星をながめていた。
 その姿を見つけたメイドは両親に報告して、翌日こっぴどく怒られたっけ。
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