【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
優しい彼女は今夜の満月……俺や村の人達を見て驚くだろう。昨夜、エルモが眠らされたあと、兄貴と言い争ったが……兄貴はダメだと言い折れなかった。
今夜を過ぎたらエルモは俺のそばから、居なくなるかもしれない。
「グル……彼女がお前の事を怖がらないといいな……まあ、オレはそんな人間が居るとは思わないけど。彼女の飯は旨い、一緒に眠ると暖かく気持ちよかった」
なに? エルモと一緒に眠っただと?
「兄貴まさか、彼女の胸の中に潜り込みやがったなぁ! ずるいぞ! 俺より先に頬すりはするし。寝るときは俺がエルモを抱きしめて眠っていたんだ!」
「はぁっ、どんだけ独占欲丸出しなんだグル! 表に出るかぁ~久しぶりに相手してやる」
「おお、望むところだ!」
丘の上にある家の前で、取っ組み合いの兄弟ケンカが始まる。その音を聞きつけた村の人は、なんだなんだと集まってきた。
「クソッ! 相変わらず、すばしっこいな兄貴!」
「ハハッ! 鈍臭い、グルなんかに捕まるかよ!」
コレは村人達にも手に負えない兄弟ケンカだ。精霊の森に住んでいたときも二人はときおり、こんなふうに戯れあっていたことを――村人達は思い出した。
「コレ!」
この場に息を切らして、ひとり手に何やら持って現れた。
「兄弟喧嘩とは、お前らいい加減にしないか!」
ゴン、ゴンと畑に水をまく柄杓で、昔の様に二人の喧嘩を止めにはいる。
ばっちゃんは二人のケンカの仲裁役だ。
「ゲッ、ばっちゃん! ……イテッ、やめる、止めるってばっちゃん、イテッ、イテテ!」
「久しぶりだな、ばっちゃん元気か! ウワッ! イテェーーッ!」
「……ハァハァ、グレどこに行っておった! グルが何ヶ月もの間、探し回っとったんだぞ!」
ばっちゃんは息を切らしながらブンブン柄杓を振るが、とうとう足にきてふらつくと村の人が慌ててばっちゃんを支えた。
兄貴は村の人に抱えられたばっちゃんの近くにいき、深く頭を下げた。
「……すまん、ばっちゃん! オレは精霊の森に出るようになった、悪いモンスターを狩っていた」
「「はぁ? 悪いモンスター?」」
みんなは信じられない。
ほんの数年前までは空気が澄み、水はキラキラ光り、緑の精霊と共に歩んできた村と、多くの精霊が住む――緑豊かな精霊の森。
「嘘だろ!」
「嘘じゃない! 緑の精霊が森から消えてから、森にはほかの精霊達も寄り付かなかなった。しばらくはキラキラしていた森が、どんよりして悪いモンスターがでる様になった。オレはそれをみつけて退治していた……コレは、オレのせいで起こった事だからな」
グレの発言に、グルと村人も驚くしかない。
「ちょっと待て! なんだよ、兄貴。あれほど、一人で背負うなって言ったろ? 俺にもそのことを言えよ」
兄貴は首を横に振る。
「お前に言えるかよ! ……オレのせいで、みんなは村を追い出されて、精霊の怒りで人間の姿にされたんだ……ごめん、オレがあんな女に騙されたから……」
兄貴は声を震わせ、小さな体で村のみんなに頭を下げた。俺は何も知らなかった……兄貴はズッと、あのときの事ばかり考えていたんだな。
みんなは兄貴に「気にしなくていい」「悪いのはグレでは無いあの子」だと、口々にグレに言った。
今夜を過ぎたらエルモは俺のそばから、居なくなるかもしれない。
「グル……彼女がお前の事を怖がらないといいな……まあ、オレはそんな人間が居るとは思わないけど。彼女の飯は旨い、一緒に眠ると暖かく気持ちよかった」
なに? エルモと一緒に眠っただと?
「兄貴まさか、彼女の胸の中に潜り込みやがったなぁ! ずるいぞ! 俺より先に頬すりはするし。寝るときは俺がエルモを抱きしめて眠っていたんだ!」
「はぁっ、どんだけ独占欲丸出しなんだグル! 表に出るかぁ~久しぶりに相手してやる」
「おお、望むところだ!」
丘の上にある家の前で、取っ組み合いの兄弟ケンカが始まる。その音を聞きつけた村の人は、なんだなんだと集まってきた。
「クソッ! 相変わらず、すばしっこいな兄貴!」
「ハハッ! 鈍臭い、グルなんかに捕まるかよ!」
コレは村人達にも手に負えない兄弟ケンカだ。精霊の森に住んでいたときも二人はときおり、こんなふうに戯れあっていたことを――村人達は思い出した。
「コレ!」
この場に息を切らして、ひとり手に何やら持って現れた。
「兄弟喧嘩とは、お前らいい加減にしないか!」
ゴン、ゴンと畑に水をまく柄杓で、昔の様に二人の喧嘩を止めにはいる。
ばっちゃんは二人のケンカの仲裁役だ。
「ゲッ、ばっちゃん! ……イテッ、やめる、止めるってばっちゃん、イテッ、イテテ!」
「久しぶりだな、ばっちゃん元気か! ウワッ! イテェーーッ!」
「……ハァハァ、グレどこに行っておった! グルが何ヶ月もの間、探し回っとったんだぞ!」
ばっちゃんは息を切らしながらブンブン柄杓を振るが、とうとう足にきてふらつくと村の人が慌ててばっちゃんを支えた。
兄貴は村の人に抱えられたばっちゃんの近くにいき、深く頭を下げた。
「……すまん、ばっちゃん! オレは精霊の森に出るようになった、悪いモンスターを狩っていた」
「「はぁ? 悪いモンスター?」」
みんなは信じられない。
ほんの数年前までは空気が澄み、水はキラキラ光り、緑の精霊と共に歩んできた村と、多くの精霊が住む――緑豊かな精霊の森。
「嘘だろ!」
「嘘じゃない! 緑の精霊が森から消えてから、森にはほかの精霊達も寄り付かなかなった。しばらくはキラキラしていた森が、どんよりして悪いモンスターがでる様になった。オレはそれをみつけて退治していた……コレは、オレのせいで起こった事だからな」
グレの発言に、グルと村人も驚くしかない。
「ちょっと待て! なんだよ、兄貴。あれほど、一人で背負うなって言ったろ? 俺にもそのことを言えよ」
兄貴は首を横に振る。
「お前に言えるかよ! ……オレのせいで、みんなは村を追い出されて、精霊の怒りで人間の姿にされたんだ……ごめん、オレがあんな女に騙されたから……」
兄貴は声を震わせ、小さな体で村のみんなに頭を下げた。俺は何も知らなかった……兄貴はズッと、あのときの事ばかり考えていたんだな。
みんなは兄貴に「気にしなくていい」「悪いのはグレでは無いあの子」だと、口々にグレに言った。