【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

 ――あれは十年以上前の夏の日。

 あの子と男の子は精霊の森の近くで怪我をした、兄貴を助けてくれた。
 その子は男の子が来ない日も、兄貴に会いに森に来てくれていた。

『グレちゃん、遊ぼう!』
『うん!』

 二人が出会って一年たち。 

 兄貴はあの子に人型の姿を見せた、あの子はその姿にも驚かず嫌がらなかった。
「ズッと、そばにいて」と、兄貴が告白をしたときも、笑顔でその告白を受けた。

 俺たち精霊の森に住む者は恋人、結婚となった暁に緑の精霊の木の下で誓いをたてる。

 彼女にもその説明をして承諾を得た。

 ――しかし、あの女は俺たちの"神聖な精霊加護の儀式"が終わった途端に「フゥッ、フラグが立った。次に行かないと、じぁーねぇ!」と、恋人となった兄貴を置いて何処かに消えてしまった。


 フラグなどと、わからない言葉を残して……

 
 訳がわからず一人残されたグレと、神聖な加護を渡した緑の精霊は怒り、俺たちを人の姿にして前から姿を消した。

 ――そして村は植物が育たなくなる。

 人型となった俺たちは他の獣人の里にも行けず、暮らせなくなって村を捨てることになった。


「誰もグレのことを恨んではおらぬ。みんなはここでも楽しく生きておるんだ。気にせずここに居れば良い」

「ウグッ……み、みんな、ばっちゃん、ありがとう」

 グレがどうして、白トラの姿なのかは本人に聞いてもわからないらしい。



 ❀



 今日の満月を楽しみにしていると、みんなは帰って行き、俺は採取に出かける準備をしていた。

「兄貴、いまから俺は精霊の森の東に咲く、マリアアザミを採りに行ってくる。みんな今日は一ヶ月に一度の酒盛りだからかなりの量の酒を飲む」

「オレも手伝いについて行く」

「ありがとう」

 二人は精霊の森へと出かけた。
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