【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
家に着いてすぐエルモは、キッチンに立ち夕飯の支度を始めた。
――そうだわ。
チーズが冷えて固まらないよう、食卓の上でお鍋を温めたいとグルに伝えると「いいのがある」と言ってカセットコンロならぬ。
魔法コンロ――お鍋が一つのる大きさの、黒い平らな石を食卓の中央に置いた。
「この、平らな石がコンロになるの?」
「そうだ。この石には俺の魔法がかかっていて、こうやって触れると、キッチンのコンロ同様に火がつく仕組みだ」
石を触るとポッと黒い石に火がついた。
「すごい、魔法って便利。これならチーズが冷えて固まらなくて済むわ。グルさん、グレちゃん、いま用意するから待っていてね」
キッチンでチーズがトロトロになるまで煮込み、食卓のコンロの上に置いた。
あとは一口大に切ったパンと、こんがり焼いたソーセージ、ベーコンと茹でた野菜が乗ったお皿を並べる。
「エルモ、食べてもいいか?」
「いいよ、好きなものをこの串にさして、たっぷりチーズをつけて熱々のまま食べて……あ、火傷には気を付けてね」
「おう……フーフー、あ、あちっ、でも、美味い」
「ギャオーン、ギャオーン」
チーズをたっぷりつけて、食べ始めたグルにグレが飛び付く。
「おい待て、冷やさないと火傷するって!」
「ギャオン」
「待って、フーフー、フーフー、グレちゃん、はい」
よく冷ましてから口に持っていくと、パクリと食べて、グレはまた直ぐに口を開けた。
「ソーセージ美味しかった? 次はジャガイモだよ、グレちゃん」
「グー!」
パク、パク、美味しそうに食べるグレの姿が可愛くって、次、次、冷やして口に運んだ。
「おい、グレ、そんなにせがむな、エルモが落ち着いて食べられないだろう。お前のはここの皿に置くから、自分で冷やして食べろ」
「グー、グー」
「なに? 羨ましい? なんだと、ああ、羨ましいよ。俺もエルモにフーフーして"アーン"して欲しい」
「え、」
グルの本音に驚く。