【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「もう、グルさんたら……わかりました。フーフーしますね」

 フーフー冷ましてグルに食べさせると。
 今度は俺の番だと、グルにフーフーして食べさせて貰った。

「ンンッ、美味しい!」

 しょっぱいチーズと食材に食事が進み。
 たくさん用意したパンとソーセージ、ベーコン、茹で野菜はみんなの胃袋に消えた。
 二人はチーズフォンデュに満足したのか、頬を赤くしてほっこりしている。

「美味かった、またやろうなチーズフォンデュ」

「ええ、やりましょう」

「ギャーオン!」







 夕飯の後片付けを終えると昨日と同様に、グレの肉球がエルモの額にポンと当たると、エルモの意識は遠退き眠りについた。

 その、よく眠れるグレの魔法は朝を持たず、エルモは真夜中にベッドの中で目が覚める。いつも、一緒に寝ているはずのグルにグレがベッドにいない。

「グルさん? グレちゃん?」

 二人の名前を呼んでも、返事が返ってこない静かな部屋。え、ええ? 一人ぼっちが寂しくてエルモは二人を探しにブランケットをはおり、玄関の開けると夜空に大きな月が浮かんでいた。

「今日は満月なんだ」

 エルモは夜空を見上げて、まんまるな月を眺めていると。何処からか楽しげな声が聞こえてきた。

(……歌声と手拍子? どこから?)

 高台になっているグルの家からあたりを見回すと、村の中央の広場に灯りが見えた。もしかして、そこにグルとグレがいる? と、エルモは村の広間に足を走らせた。

 でも、近くに連れてエルモの足は止まる。
 見えたのは……初めてみる獣人の人達。

 その獣人達は楽しげに肩を組み、笑い、酒を酌み交わしていた。


(え、嘘……どうして?)


 酒を飲みかわす獣人の輪の中に、決して会う事はないと思っていた、黒い精霊獣がいたのだ。
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