【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「「あ、に、きぃーは、エルモに何したぁ!!」」
村の広場で仲間と戯れていた、大きな黒い精霊獣がコチラに飛んでくると、エルモを守る様に立ち"グルルルルッ"と唸った。
「ま、待て、違うんだ、グル!」
慌てて声を上げ、近くの建物の物陰から黒い精霊獣をグルと呼び、飛び出てくる小さな白いトラ。
え?
(ええ――! い、いま、私と話していたのはグレちゃんだったの? ヒロインと一緒にいたということはグレちゃんが白い精霊獣?)
……ずいぶんゲームとは違って、コロコロして、可愛い見た目のだけど。
とつぜん現れた黒い精霊獣の怒りおさまらず、牙をむけ叫ぶ。
「兄貴、なにが、俺がエルモを試してやるだ! こんなに、エルモを泣かしやがって! いくら兄貴でも許さんぞ!」
「ヒェ……グル、泣かしたのは悪いが。エルモちゃんが泣いたのはオレの昔話をして後からで。オレがエルモちゃんに酷いことをして、泣かしたんじゃない!」
「はぁ? そんな話、俺に通じるか!」
「……ほんとうだから」
目の前で小さな白いトラと黒い大きなトラが言い合いをはじめた。
いま、グルって呼んだわ。
この黒い精霊獣は"グルさん"なの?
(え、ええ――!)
満月の夜。
広場で歌い、踊り、お酒を楽しげに飲む獣人たちと、グルに怯えるグレ、黒い精霊獣のグルの登場に驚くエルモがいた。
「信じてくれ、オレは泣かせていないからな」
「……わかった、信じるよ」
その黒い精霊獣はつぎに私をみて「エルモ」と呼び、不安げに揺れるエメラルド色の瞳を向けられた。
「あ、あなた……グルさん、なの?」
「……そうだ、グルだ。エルモはいまの俺の姿を見て、どう思う?」
どう、思うって。
「私はおもいっきり抱きついてモフモフ、スリスリしたい……あと、添い寝も」
「「…………!」」
もし、この世界で黒い精霊獣に会えたら!絶対にしたいと思っていたから、エルモは本音を素直にいった。
「お、俺に抱きついてモフモフ? スリスリ? 添い寝!」
「プッ、ハハハッ、エルモちゃんは見かけによらず大胆だなぁ」
驚くグルと、笑うとグレがいた。