【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

二十一

 エルモの本音はグルを困惑させたようだ。

「あ、ごめん。いや、だったらいいの……」
「いや、ではないのだが……」

 "触ってもいい?"はすごい発言だったみたいで、とまどうグルをみていると、今更ながら恥ずかしくなってきた。  

「ほんとうに、ごめんなさい」
「あやまるなって、すこし動揺しただけだから……嫌じゃない」

「ほんと?」
「ほんとうだ」

 照れあう私達をグレは笑いながら見ていて。

「グル、エルモちゃんに本名を教えたんだし、抱きついてもらえよ。彼女のこと好きだろ?」

 と言った。

「エルモに本名?」

  グレはグル本人に名前のことを伝えた。グルは驚き、瞳を大きくして首を振る。


 ――コレはまずい。


「俺はまだ、エルモに本名は教えてないけど?」

「え、そうなの? ふ~ん、エルモちゃんはどうしてか? お前の本名ティーグルを知っていぞ、なんでも書物で読んだとかで」

「書庫の書物? いやー兄貴、俺は書物に載るほど偉くないって」


 ーーまじで、まずい。


「だってよ、エルモちゃん?」

 二人が『なんで?』と聞くような、疑問にめいた瞳でエルモを見てくる。
 前世の記憶で、乙女ゲームで知っていたと言っでいい? 

 上手く説明できる? 
 話をして変な子だと思われる?
 など、いろいろ考えてしまい口籠もり、何も言えなくなる。
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