【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「……っ」
怒ってる?
どうしたらいいの?
困っていたのだけど、グルの口元は次第に笑い。
「プッ、エルモの困り顔可愛い。俺はエルモならいいんだ。この姿を見て怖がらなかったら教えようと思っていた。エルモに俺の本名を教えて、捕まえて、俺だけのものにしたかった……」
「私を捕まえる? グルさんのもの?」
グルの熱い告白に"かあっ"と頬に熱をもつ。
「照れるエルモかわいい。なあ、エルモは知っているんだろ? 俺の本名……いま呼んでくれ」
「………っ」
ジリジリとエルモに近付く、グルの目は真剣でその綺麗で吸い込まれそうだ。
ゴクンと喉を鳴らし、覚悟して、彼の名前を呼んだ。
「ティ、ティーグル」
エルモがグルの本名を呼ぶと、ブワッとグルの黒い毛が一気に膨らんだ。
「おおっ、な、なんだこれは、凄い。もう、一度、呼んでくれ」
「ティーグル……」
「うっ!」
「うっ?」
「「エルモ、たまらん」」
「きゃあ!」
グルが飛びつかれてドサッと押し倒される。
いつもとは違いハァハァと息遣いが荒く、エルモの頬をグリグリ、スリスリしてきた。
――ぴゃあ!
「グ、グルさん待って、モフモフ、スリスリは嬉しいのだけど……は、激しい」
「またねぇ、と言うか、いま自分が抑えられない」
長い鼻でグリグリ、グリグリ頬を押される。このとき、ほのかに香ったのはお酒の匂い。