【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 グルとエルモは並んで街から村までの帰り道、隣を歩くグルがエルモの手を握った。

 初めてのことで驚きグルを見上げると、彼は「フッ」と照れ笑いを浮かべて、

「……照れるな」

「フフッ、照れるけど……わ、私は嬉しいよ」

「そっか……じつは、俺も嬉しい」

 だけど、二人は照れてしばらく沈黙が続いた。

 並んで歩き、村まであと少しの所で"ギュッ"とグルの手に力が入った。

「エ、エルモ! 次のバイトの休みに一緒に精霊の森に行きたい」

「精霊の森? いいよ。薬草の採取に行くの?」

 グルは違うと首を振る。

「精霊の森の奥にある……俺達の村にエルモを連れて行きたい」

「グルさん達の村?」

「ああ、俺達が六年ぐらい前に住んでいた村……なんだ」


 ――シルフ村のことだ。


(たくさんの精霊と獣人達が仲良く住む村で、緑が多く、綺麗で、花が咲き誇るところ。乙女ゲームのスチルでは見たことがある……そこに連れて行ってくれるんだ)

「エルモ、俺と一緒に行ってくれる?」

 真剣な目でグルに見つめられて、エルモは『 「はい」と頷いた。
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