【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 大寝坊の二人と狸寝入りの一人は身支度を整えて。朝昼兼用のハチミツとバターたっぷりのパンケーキを食べ、グルの転移魔法で精霊の森に一瞬で移動する。

(あいかわらず、転移魔法って不思議な感覚ね)

 森の入り口でグレはグルに聞く。

「森の中を通って、オレ達の村に行くのか?」

「いいや、兄貴がいないか探すときに使用した、転移魔法の魔法陣が村の入り口にあるんだ――それを使って転移魔法で行こうと思う。その前に悪いけど、ちょっとここで待っていて」

 グルは近くの茂みに入って行き、しばらくして戻ってきたグルの手には、何処かで摘みとったのかはマーガレットの花束があった。

「エルモ、グレ、お待たせ。じゃー行こうか」

 その花束の説明をせずに村に行こうとするグルを、グレは小さな前足で"待て"と止める。

「なんだよ、グレ?」

「お前それ、ちゃんと花の精霊に断ったのか?」

 花の精霊?

「断ったよ。精霊にはちゃんとお礼をして、花を貰っていくと伝えた」

「それならいいけど」

 グルとグレ――二人は花の精霊だとか、エルモの知らない話をしている。それに少し寂しいとエルモは思ったけど、何も言わず二人の話を聞いていた。

「それと、前にも言ったけど。森に凶暴なモンスターがでるから、一人での行動は控えろよ」

「わかっている。それより、花の精霊にお礼を言われたよ「わたし達を守ってくれる、白ちゃんにありがとうと伝えて」だってさ」

 それにグレはタジタジになり、

「あ、いいや、その原因を作ったのはオレだ」

「兄貴! ……それは違うと何度言えばわかるんだ! いい加減にしろ! 森に住む精霊はみんな言ってくる、怪我をしてまで私達を助けてくれるって」

「それは……オレに力がなくて、弱いからだ!」

 言い合い、睨み合うグルとグレ。

(グレちゃんは……一人でズッと森の精霊を守っていたんだ……だから、初めて会ったときに怪我をしていたのか)

 エルモはグレの近くにしゃがみ込み、柔らかい頭を撫でた。

「グレちゃんは優しいね」

「エルモちゃん? オレは……あ、いや、グル。さあ、俺たちの村に行くぞ! 早くしろー、早くだ!」

「ん? 優しい兄貴はどうした?」

「グル! お前、まで言うのか!」

 グルとエルモに優しいと言われ、撫でられて、グレは大いに照れていた。
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