【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 グルに優しく見つめられてキスされるのかと思い、目を瞑ったけど。くっ付いたのはおでこと、おでこ、その後に頬がくっつく。

(……ドキドキする。鼓動が早く、頬が熱いわ)

 くっ付いた頬が離れると耳まで真っ赤にした、エルモとグルは見つめ合う。

「よろしくね、グルさん!」
「こちらこそ、よろしく」


  ――その直後、チタが。

「お! おお~なんだ? 体が温かい~! 幸せな想いが身体中をめぐるよ~久しぶりの感覚ぅ~!!」

 と、プルプル体を揺らして、小さな頬をピンク色に染めて悶える。
 その様子を見ていたグレ。――そして、いち早くフェリチタの木になにかを見つけた。

「グル、エルモちゃん、チタ、コレを見ろよ、蕾だ! このフェリチタの木の枝に蕾がついた。よかった、この木は枯れていない! チタは消えなくて済む!」

 その声にチタも驚く。

「ほんとだぁ~、蕾だ、枝に蕾がついた!」

 枝に一つの小さな蕾――その蕾の周りをチタは飛び、グレとチタは喜ぶ。

「二人とも大喜びだね」

「ああ、村の大切な木――フェリチタの木に蕾がついた。もしや、俺たちの告白でか? それなら――俺とエルモの想いが膨れ上がれば、もっとフェリチタの木に花が咲くのか?」

「え?」

 いきなりガッチリ、グルに肩を掴まれた。
 そして、真剣な表情をしたグルの顔が近付いてくる。いきなりのグルの行動にエルモは焦る。

「ちょっと、待って、グルさん!」

 マーガレットの花束で顔をガードしてしまい、グルはポフッと花束に顔を埋めた。

「……エルモ? ダメか?」

「初めてだから、いきなりは恥ずかしい!」
「お、俺だって、キスは初めてだ!」

「私たち、間接キスはしたわ」
「それは、直接じゃない」

 このあと、キスしたいと諦めないグル……だけど。
 こんなに真横でグレちゃんとチタちゃんが瞳をランランさせて"早くしろ"って圧がすごいし。

 一度、恥ずかしいと思ったら――どんどん恥ずかしくなる。


「ほ、頬にキスするから、いまはそれで許して!」

「うん、わかった」

 グルの返事は早かった。




 日も暮れてきたからと精霊の森の村から家に帰り、夕飯にチーズとツナのパンプティングを作り。グルとグレ、エルモは和やかな夕飯を終えた。エルモはキッチンで後片付けを始めた。

「エルモ、少し奥の部屋にいる」

「はーい」

 グレはお風呂に行き、グルは奥で作業をするからと、奥の部屋に入って行った。
 しばらくして奥の部屋から、グルの陽気な鼻歌が聞こえてきた。

 ――グルさん、上機嫌ね。

「もう、そんなに嬉しかったの?」

 フェリチタの木の下でグレとチタに見守られながら、エルモはニッコリ微笑んだグルのほっぺにキスした。
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