【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
ーーよかった。
騎士がいなくなり、お客も"ホッ"として買い物の続きを始めた。
しかし――リリン、リリンとドアベルを鳴らし、アルベルトは店の中に戻ってくる。
何をするかと再度、身構えたのだけど。彼は店にいるお客とおじさん、おばさん、そして、エルモにも軽く頭を下げた。
「すみません、お騒がせいたしました。レジのお姉さんもごめんねぇ~」
もう一度、頭を下げてアルベルトは店を出ていく。
しばらく外で騎士達は騒いでいたけどその大きな声は遠くなっていき、しまいに聞こえなくなった。
ホッ。どうやらアルベルトは私がエルモだと気付かなかったみたい。
――そうよね。服装は質素だし髪型たって昔みたいにこった髪型ではない……それに、お化粧だってしていない。
(フゥッ……威圧感のある長身の騎士に囲まれて……こ、怖かった。はやく、グルさんに会って癒されたいな)
あがった息を整え胸をおさえるエルモを、おばちゃんは心配して奥から出てきた。
「エルモちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
その後はなにごともなくパンも完売した。
後片付けも終わり、今日の仕事は終わったと、グルに魔法カードで伝えると。
すぐに「迎えに行くよ」と言ってくれた。
(はやく、グルさんに会いたい……)
「お先に失礼します。おつかれさまでした」
「ご苦労さん」
「おつかれさま」
貰ったパンを胸に抱えて、グルとの待ち合わせの場所へ行こうと店からでると。
店の真正面に腕を組み、壁に寄り掛かるアルベルトの姿があった。
彼はエルモのバイトが終わるのを待っていたらしく、ニヤニヤ笑い近付いてくる。
――いや、来ないで!
エルモは走って逃げようとしたのだけど、アルベルトの動きがいち早く手を掴まれる。
「いたっ、……は、離してください!」
「ハハッ、嫌だね。……俺はお前のことをズッと探していたんだ。ククッ、まさかお前がこのサーティーア国にいるとはね――会いたかったよ~エルモ嬢」
アルベルトはニヤリと笑った。