【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

二十九

 落ち着け"大丈夫だ"と自分に言い聞かせて、アルベルトに頭を下げた。

「こんにちは騎士様、私に何か御用でしょうか?」

 エルモがそう言うとは思っていなかったのか。彼は一瞬だけ面をくらった表情を浮かべたけど、直ぐにニヤニヤ嫌な表情に戻る。

「ハハハッ……何か御用だって? 他人行儀な挨拶だなぁ、エルモ嬢」

「エルモ嬢? 私は普通の村娘ですよ、騎士様」

「ハァ? 君はエルモ嬢ではないと、違うと言うんだな……フゥーン。まあいいさぁ、村のお嬢さんが"捕まろう"と俺には関係ないし、じゃーなぁ村娘のエルモ!」

 え、いま「私が捕まる」とアルベルトは言った?

 そのアルベルトはヒラヒラ手を振り前から去っていく……彼を止めたくはないけど「捕まる」と聞いて止めた。

「ま、待って騎士様。捕まるとは? どういうこと?」

 止めるのがわかっていたのか、アルベルトはすぐに足を止めて振り返り、楽しそうにニヤついていた。

「なに? 令嬢じゃなく、村娘のエルモは気になるの?」

 うっ

「べっ、別に」

「ハハッ、強がるなよ。顔に「気になる」って書いてあんぞ。まあいいや、お前の元婚約者のエルドラッド殿下がさぁ~俺に手紙を送ってきたんだよ」

「手紙? なぜ騎士様に?」
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