給料0円のお花屋さん
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「いらっしゃいませ」
入った瞬間、優しそうなお兄さんがこっちを向いて笑いかけた。
「あの、memoryっていうお花屋さんはここですか?」
「はい、何をお求めですか?」
私がこの店に来た理由は、私の母親が最近ここにきてとても綺麗な花束を持って帰ってきたからだ。その花束が欲しかったのに、母は先輩にあげるからダメと言ってくれなかった。
「あなたの作った花束が欲しいんです」
「自分用ですか?」
さっきから決まったセリフを言っているかのような、あまり感情のない言葉が多かった。
「分かりました。花束を作るために軽く自己紹介してもらえますか?好きなものとか」
私は不思議に思いながらも綺麗な花束を作ってもらうために、一応話すことにした。
「水瀬葵、高一です。好きな色は水色とか青とかで、可愛いものとか好きです。バスケ部です。このぐらいで大丈夫ですか?」
店員さんは、はい。と言いながら花を取り出した。
「花、お好きなんですか?」
店員さんは、手を止めることなく私に聞いた。
「はい。前、母がここで花を買って。一目惚れです。」
店員さんは、ははっと笑いながら話を続けた。
「それは僕も頑張らないといけませんね」
私も、店員さんに愛想笑いをした。
「好きな花はありますか?」
店員さんはようやく手を止め、私に目を合わせて聞いた。
「ネモフィラですかね。水色好きなので」
手を止めたはずだったのに、また動き出しネモフィラを手に取った。
「いいですよね、ネモフィラ。花言葉は『可憐、どこまでも成功、あなたを許す』ですよね。僕も好きです」
さっきまで感情のない言葉を発してたはずが、花の話になると急に柔らかな空気に包まれる。心なしか声も優しくなる。
「店員さんの好きな花は何ですか?」
「春日涼太。名前。かすがって書いてはるひって読みます。」
一瞬よくわからなかったが、私が店員さんと呼んだから名前を教えてくれたのかと思った。
「春日さんの好きな花は何ですか?」
春日さんは一輪の花を手に、言った。
「この花です。ラベンダー。」
「花言葉は何ですか?」
私がそう聞くと、春日さんは口をつぐんだ。
沈黙の中、包み紙が音を立てた。青系メインの綺麗な花束を持ちながら春日さんは言った。
「出来ました。説明、聞きますよね」
私はコクリと頷いた。
「まず、この薄い水色の花がルリマツリです。花言葉は『密かな情熱』この紫の花がノボタン。花言葉が『落ち着き』可愛いものが好きと聞いたので入れてみました。それで青い薔薇。花言葉は『不可能なことを成し遂げる』最後はネモフィラです」
凄い綺麗だ。花の種類も多いのに、綺麗にまとまっている。
「ありがとうございます。お代は?」
春日さんは私に花束を渡した。
「花束、どうですか?」
「凄い綺麗です!それに薔薇がいい香り。最高です」
春日さんは私に笑いかけてきた。
「お代は今いただきました。ご来店ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
私は春日さんの言葉を処理するのに時間がかかった。お代はいらないってこと?
「まだお代が、」
不思議そうにこちらを見つめながら春日さんは言った。
「喜んでもらえたらそれだけで大丈夫ですよ」
「え?」
何度言っても聞かなさそうだったから私はすぐに受け入れた。
「ありがとうございます。」
はい、と笑いかけて手を振って私を見送ってくれた。
綺麗な花束を片手に私はまた来ようと決心し、軽快な足取りで家に帰った。
「いらっしゃいませ」
入った瞬間、優しそうなお兄さんがこっちを向いて笑いかけた。
「あの、memoryっていうお花屋さんはここですか?」
「はい、何をお求めですか?」
私がこの店に来た理由は、私の母親が最近ここにきてとても綺麗な花束を持って帰ってきたからだ。その花束が欲しかったのに、母は先輩にあげるからダメと言ってくれなかった。
「あなたの作った花束が欲しいんです」
「自分用ですか?」
さっきから決まったセリフを言っているかのような、あまり感情のない言葉が多かった。
「分かりました。花束を作るために軽く自己紹介してもらえますか?好きなものとか」
私は不思議に思いながらも綺麗な花束を作ってもらうために、一応話すことにした。
「水瀬葵、高一です。好きな色は水色とか青とかで、可愛いものとか好きです。バスケ部です。このぐらいで大丈夫ですか?」
店員さんは、はい。と言いながら花を取り出した。
「花、お好きなんですか?」
店員さんは、手を止めることなく私に聞いた。
「はい。前、母がここで花を買って。一目惚れです。」
店員さんは、ははっと笑いながら話を続けた。
「それは僕も頑張らないといけませんね」
私も、店員さんに愛想笑いをした。
「好きな花はありますか?」
店員さんはようやく手を止め、私に目を合わせて聞いた。
「ネモフィラですかね。水色好きなので」
手を止めたはずだったのに、また動き出しネモフィラを手に取った。
「いいですよね、ネモフィラ。花言葉は『可憐、どこまでも成功、あなたを許す』ですよね。僕も好きです」
さっきまで感情のない言葉を発してたはずが、花の話になると急に柔らかな空気に包まれる。心なしか声も優しくなる。
「店員さんの好きな花は何ですか?」
「春日涼太。名前。かすがって書いてはるひって読みます。」
一瞬よくわからなかったが、私が店員さんと呼んだから名前を教えてくれたのかと思った。
「春日さんの好きな花は何ですか?」
春日さんは一輪の花を手に、言った。
「この花です。ラベンダー。」
「花言葉は何ですか?」
私がそう聞くと、春日さんは口をつぐんだ。
沈黙の中、包み紙が音を立てた。青系メインの綺麗な花束を持ちながら春日さんは言った。
「出来ました。説明、聞きますよね」
私はコクリと頷いた。
「まず、この薄い水色の花がルリマツリです。花言葉は『密かな情熱』この紫の花がノボタン。花言葉が『落ち着き』可愛いものが好きと聞いたので入れてみました。それで青い薔薇。花言葉は『不可能なことを成し遂げる』最後はネモフィラです」
凄い綺麗だ。花の種類も多いのに、綺麗にまとまっている。
「ありがとうございます。お代は?」
春日さんは私に花束を渡した。
「花束、どうですか?」
「凄い綺麗です!それに薔薇がいい香り。最高です」
春日さんは私に笑いかけてきた。
「お代は今いただきました。ご来店ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
私は春日さんの言葉を処理するのに時間がかかった。お代はいらないってこと?
「まだお代が、」
不思議そうにこちらを見つめながら春日さんは言った。
「喜んでもらえたらそれだけで大丈夫ですよ」
「え?」
何度言っても聞かなさそうだったから私はすぐに受け入れた。
「ありがとうございます。」
はい、と笑いかけて手を振って私を見送ってくれた。
綺麗な花束を片手に私はまた来ようと決心し、軽快な足取りで家に帰った。