【短】失恋スタートライン
「少しだけ、お時間もらえますか?」
「いや、急いでるんで」
「えっ!?そ、そこを何とか……」
「無理です」
「ええっ!?」
ま、まさかの無理だなんて……。
でもでも!
このチャンスを逃すわけにはいかない。
今、絶対に伝えるんだ。
「で、では今から言います!私、田宮りずと申します!高瀬くんのこ……」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
「へ?」
「分かった。俺の時間を少しあげるから待って」
「は、はい」
急に慌てだした高瀬くんは周りをキョロキョロ見て、小さく息を吐いた。
「先食べてて」
「おう」
「あんたはこっち」
「わっ!」
高瀬くんが友達に声をかけたあとに、私の手首を掴まれ強めに引っ張られた。
た、た、高瀬くんの手が触れ……。
思わぬ展開にプチパニックに陥る。
そのまま廊下を歩く。
少し速い高瀬くんのペースに頑張ってついていき、やっと止まったところは、ひと気が少ない渡り廊下だった。