【短】失恋スタートライン



「さっきの正気?」

「はい?」



離された手に少し寂しく思いながらも、高瀬くんをじっと見つめる。

正気、とは。



「あの場で何を言おうとしたわけ?周りにたくさん人いたのに」

「あ、だって高瀬くんがお急ぎのようだったので、用件だけでも言おうと……」

「はぁ……」



あ、ため息をつかれてしまった。

でも、そんな姿までかっこよく見えるんだから恋ってすごい。



「あのさ、話す気がないからそう言っただけで、別に急いではなかった」

「そうなんだ。だから今、こうやってお話できてるんですね!」



嬉しいな。

急いでるみたいなのに申し訳ないなぁ、って気持ちがほんの少し、1.3ミリ程度はあったから。

話せてるのが夢みたいだ。



「あんたって、頭弱い?」

「初めて言われたけど、高瀬くんに言われるならそれでいいかも」

「やっぱり頭弱い……。まぁいいや。で、用件は?」


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