【短】失恋スタートライン
高瀬くんから話題を振ってくれるなんて……!
本当は私から話さないといけないのに、何て優しいんだろう。
「私、田宮……」
「田宮りずさん。用件を簡潔に」
「わわっ」
また名前から伝えようと思ったら、高瀬くんはさっきのを聞いてくれてたみたいで感動してしまった。
不意打ちに名前を呼ばれて心臓が飛び出そうになる。
バクバクする胸に手を当てて、一度深呼吸をした。
「私、高瀬くんが1か月くらい前におばあさんに優しくしているところを見たんです。周りは見るだけで行動に起こせないのを、高瀬くんはためらいなく優しく手を伸ばし、おんぶまでしていてすごく素敵だなって」
「そんなの俺がしてなかったら、他の人がしてるよ」
「そんなことないです!誰でもできることじゃない。当たり前のように優しくできるって、当たり前じゃないんですよ。すごいことなんです」
私の息継ぎなしの言葉に高瀬くんが戸惑っているのが分かる。
でも、今しか言えない。
ちゃんと伝えたい。